新ゼロ「サプライズ!」
サプライズ? わー、無理。 有り得ない。 あ、いや、うん。そうね。他のひとだったらするかもしれない。 でもね。 ジョーはね。 駄目なのよ。できない。 え、どうなるのかって? だったらやってみなさいよ。私はやらないから。 だってね。きっとこんな感じよ? 「フランソワーズ、あのさ今日…」 元々、自分の誕生日なんて意味があるのかって思ってきた人だから。 え?16日?何かあったっけ? なんてしらばっくれて、じゃジャーン!ハピバースデー、サプライズ! ってやったって、たぶん本人は登場しないし、それ以前に拗ねて落ち込んでああやっぱり僕の誕生日なんかって振り出しに戻っちゃうもの。 だからね。 やらないし、したくないの。サプライズパーティなんて。 えっ? じゃあどうするのかって? そんなの決まってる。 *** 「ジョー!お誕生日おめでとう!」 いいけど、ってちょっと怒ったみたいに口の中で呟いたりして。 「ふふっ」 駄目じゃないの、知ってるわ。 プレゼントはいつもの通り 私の時間を全部あげる
駄目だめ、絶対やらない。しない。
だって、それってあれでしょ。本当は念入りに準備しているのに本人には内緒にするっていう。更に言うと、「え?今日って何かの日だっけ?ごめん、友達と約束してるんだ」とかしれっと言っちゃったりする。
っていうか、そういうの冗談でもやったらえらいことになるから。
「ごめんね、ジョー。今日はちょっと遅くなるの。でも、なあに?」
「あ、いや。別になんでもない」
「そう?…ちなみにジョーは今日はずっと家にいるのよね?」
「う、うん…たぶん…」
って、絶対どっか行っちゃう!
本当の誕生日かすらあやしいんだから、別にどうでもいいってそんなふうに特別何をするでもなく過ごしてきた人だから。
だから、そんなことないよ、大事なあなたが生まれた日だから大事だし私には凄く嬉しい日なんだよ、だからいっぱい笑って楽しく過ごそうねって毎年まいとし何度も繰り返してやっと。
やっと、ああ誕生日って楽しいんだ祝ってもらえるんだって笑ってくれるようになったの。
それまでは誕生日は嫌いって家からいなくなってたんだから。
なのに。
朝からずっと、鬱陶しいくらいお祝いするのよ!
「え?」
「もう。笑って」
「あ、いやでも今、夜中の」
「日付が変わったら誕生日だもん。だめ?」
「いや、…」
でもわかってるもん。そんな「やめてくれよ」なんて顔しても駄目。
頬が緩んでるの、バレバレだよ?
「あのさあフランソワーズ、いま午前0時って知ってる?」
「知ってるわ。一番にお誕生日おめでとうって言いたかったんだもの。…駄目?」
首筋に抱きついて耳元で言ったんだから。
って。