ジョーはいっしゅん、瞳を丸くして・・・その後、笑い出した。
どうして笑うの。ジョーのばか。
「ごめん、ごめん・・・」
まだ笑ってる。
「・・・ごめん」
言いつつ、ハンドルに向き直って車を出そうとするから。
思わず、彼の右腕に抱きついていた。
だって。
ひとりで納得して、大笑いして・・・それって何なの?
「危ないよフランソワーズ」
駄目だろ、と頬をつつかれる。
だって。
答えてくれてないもの。
「どうして笑うの?どうして・・・私のには来てくれないの?」
「・・・行きたくないからって言っただろう?」
また同じ答え。
今は半分拗ねたように。
そう答えられるだろうと予想はしていたけれど、やっぱり胸の奥が重くなった。
「やっぱり、・・・ミナのほうが好き?」
「え?」
「前に私のほうが・・・ミナより好きなバレリーナだって言ってたのに」
「今でもそうだよ?」
だったらどうして。
「あー・・・えーと・・・」
急に真っ赤になる。
「それとコレとは別で・・・」
ぐしゃぐしゃと頭を掻く。
「・・・もういいだろう?この話は」
「イヤ」
だって私は納得してないもの。
恋人が花束を持って楽屋に来てくれるのって、夢だったのに。
周りの子たちの元に、次々に訪れる親しい人たち。
私の所には・・・いつも、グレートのあたたかい笑顔があるけれど。
その背後にいつも探してしまう、あなたの姿。
ジョーは?と訊くと、困ったように口ごもるグレート。
だから、いつからかもう期待はしなくなっていた。あなたが来てくれること。
だけど。
ミナからのメールで知った。あなたがミナの公演には行っているということ。
どうしてミナのには行くの。
どうして私のには来てくれないの。