「さいぼーぐ・しまむらくん 我が家へ来る」
5
「なんでそんなことを訊くんだい?」
あくまで笑顔を保つジョー島村。
けれども、同じ「しまむらじょー」であるかめには、この表情をする時は嘘をついている時だとわかってしまったのです。
かめは、お嬢さんの気持ちを思うとやりきれません。
だって、まさかジョーが「浮気」をしたなんて・・・・っ!!
ここのうちにはらぶらぶな二人が居る、って聞いてたのに。
なんだか哀しくなってしまう、かめのしまむら。
そんなかめの様子には全く気付かないジョー島村。
淡々と話します。
「・・・オトコばっかりだから心配しなくていいよって言ったのになぁ・・・」
くすっ。
「心配性だな、フランソワーズは♪」
なんだか嬉しそうだったりもするのです。
かめは小さくため息をつくと、重ねて言いました。
「じょー・・・・。嘘、ついてるね?」
「え」
びっくりした目をされても、だまされません。
「ふらんそわーずからの、伝言」
こらこら。
本当は内緒で進めるミッション(?)だったはずなのに、今やすっかり忘れているかめのしまむら。
誰も伝言なんて頼んでいないのですー。
「『ポッケから名刺が出てきたのよ』」
それを聞いた途端、凄い勢いでソファから立ち上がり、部屋を出てゆくジョー島村。
その勢いで、ころりん。と床に落ちるかめのしまむら。
今っ今っ、かそく・・・しなかった??(どきどき)
日常生活で「かそくそうち」を、使うなんて。
・・・あんまり使うと、不意に故障したりしちゃうかもしんないんのにー。
かめは転がったまましみじみと思うのです。
そうして。
誰か、ボクを元に戻して〜(泣)
甲羅を下にして転がっていたのでした。
じたばたじたばたじたばた
数分後。
何やら廊下が騒がしくなり、リビングのドアが勢いよく開かれました。
入ってきたのはお嬢さん。
ほっぺたをちょっぴり膨らませています。
すたすた歩いてきて、転がったかめをさっと抱き上げました。
でも、目はかめを見ていません。
そんなお嬢さんの後ろをくっついて歩いてきたのはジョー島村。
しきりに何やら言っています。
「だから、フランソワーズ。そんなに怒らなくたっていいだろう?」
「別に怒ってません」
「怒ってるじゃないか」
「怒って、ま・せ・ん!」
かめを抱いたまま、ソファに座りますが、ジョーを避けるようにそっぽを向いたままです。
かなりの剣幕なのです。
ひゃ〜・・・・もしかして、ボクが喋ったせいでこうなってるのかな・・・・?
どきどきどき
なんだか胸が苦しいような、そうでもないような、混乱してくるかめのしまむら。
「あなたがそんなに浮気者とは思わなかったわ」
「浮気って。だから僕は何にも覚えがないって言ってるじゃないか」
「何にも、って何?本当は覚えがあるんじゃないのかしら」
「ないってば・・・」
浮気者。という言葉に、なんだか自分もいたたまれない気分になってきたかめ。
ちょっぴり、ジョーを応援する。・・・心の中で。
がんばれっ
だって、同じ「しまむらじょー」なのですから、わかるのです。
彼が浮気なんてするはずがない、って。
いつでもどこでも「ふらんそわーずがいちばんすき」なのは自分も一緒なのです。
絶対、何か誤解があるはずなんだっ。そうして、それを見つけるのがボクの使命なんだっ!!
・・・かめよ。あとで脱力するから、あまり関わらない方が身のためだと思うよ。
ウチのピュンマ様に聞いてみ?
ウチの二人に関わると、最終的にどんな気分になるのか彼がいちばんよーく知ってるから。
「じゃあ、これは何?」
お嬢さんの白い手が差し出したのは。
・・・つづく。