緊急企画

「さいぼーぐ・しまむらくん 我が家へ来る」

 

さっ、と白い手が手品のように小さな四角いカードを出しました。
名刺なのです。
「知らないよ、本当に」
「だって、アナタのポッケから出てきたのよ?」
よいしょ。
首を伸ばして、カードを覗くかめのしまむら。
カードには。
おんなのこの名前が書いてあって、電話番号と・・・口紅のキスマークがついてました。
「いいわよねぇ・・・もてて」
「だから、僕はそんなの知らないって何度も言ってるじゃないかっ」
「電話したの?」
「するわけないだろう?」
「でも、この前の飲み会には居たのよね?・・・オトコしか居ない、って言ってたのに」
あ。
ふらんそわーずの目が。
じょー。気付いてるかな。
泣いちゃうよ?
お嬢さんの膝の上で、お嬢さんとジョーを交互に見つめ、オロオロするかめのしまむら。
「どうして嘘つくの・・・」
あああ。
泣いちゃうよっ!
ぱふ。
思わず、お嬢さんの腕を握り締めるかめのしまむら。
必死です。泣かせたくないのです。
ふらんそわーずっ。絶対、誤解なんだからっ。大丈夫なんだからっ!
泣かなくたって、大丈夫だからっ!
かめは念じます。
ジョー、もっとちゃんと説明しなくちゃ駄目だっ!わかってもらえないよっ!
すっかり自分のことは棚に上げているのです。

「・・・もう、いいわ」
ふ・・・と寂しく微笑むと、くるりん、と名刺を返し、ジョーに差し出すお嬢さん。
「はい。返すわ」

すると、ジョーは何かを決意したかのように名刺をひったくるとビリビリと引き裂いたのでした。
そうして、お嬢さんの両肩を掴むといきなり唇を奪いました。
!!!
二人の間に挟まれて、驚くかめのしまむら。
そして、同じくびっくりしているお嬢さん。
「・・・ジョー、やめっ・・・・」
ジョーの腕から逃れて唇を離すと、いきなりジョーの頬を張りました。
「ってー・・・」
「嫌いよっ!ジョーのばかっ!!」
真っ赤になっているお嬢さん。
事の成り行きについていけない、かめ。
何しろ、お嬢さんがジョーを殴るなんて思ってもみなかったのです。
しかも。
嫌い、って言われた・・・・っ
そんな事も言われたことがないかめは、ただただ呆然と見守るしかないのでした。
しかし。
ジョー島村は、殴られても少しもダメージがありません。ちらっとでも身体は揺れません。
「・・・ホントに嫌い?」
なんて優しく聞いてきたりなんかしちゃうのです!!
しかもっ!かめの見るところ、「ぜろぜろないん」の目をしてるんです!
・・・戦闘中、じゃ、ないよね?いま。
ジョーの瞳は真剣なのです。(別名「タラシ光線」発射中)
「・・・そんなわけ、ないじゃない・・・っ!」
あっけなく、ジョーの胸に飛び込むお嬢さん。
その膝から、ころりん。と床に落ちるかめ。
じたばたじたばた
またもや甲羅が下になって、身動きがとれません。
しかも。
更にお互いの距離を縮めた二人の間に落ちたので・・・
むぎゅ!!
むにゅっ!!
と、思い切り踏まれていたりなんかして!!
しかし、既に「二人の世界♪」なおふたりは、足元に何が転がっていようが全く眼中にありません。
あの優しいお嬢さんでさえ、今はジョーの事しか眼中にないのです。

えーと。
かめのしまむらは考えます。
えーと、えーと。
これって誤解が解けたっていうことなのかな・・・?
でも、ジョーは何にも説明してないのに。・・・・かいけつ、してないんじゃ・・・?
うやむやになってる。ということに踏まれながら気付くかめ。
うやむや、で・・・いいのかなぁ・・・

いいのよっかめちゃん♪
この二人はねー、そんなの誤解だって最初からちゃーんと知ってるの♪
だってね。
そのあたりは、二人の一番の被害者理解者であるピュンマ様に聞いてみましょう。
さ、出番ですよっピュンマさまっ♪

「え?う、うーん。そうなんだよね。僕も気付くまで時間がかかったほうだけど・・・
でもジェットは未だに気付いてないから、それはそれで幸せかもしれないと僕は思うんだけどね。
え、ちゃんと最初から知ってたのかどうかって?
そりゃーそうさ。だってこのふたりは、仲直りするためにケンカしてるんだからさ!」

仲直りするための、ケンカ・・・・・?
いまひとつ理解できないかめ。(いいんです。そこは放置しましょう)
で。
ボクはいつまで踏まれていればいいんだろう・・・?
(二人が離れるまで、です♪根気よく待つしかありません♪)
早くおうちに帰りたいなぁ、とかめお嬢さんの顔を思い浮かべるのでした。

 

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