毎年、この時期になるとピュンマとアルベルトが日本にやって来る。

私の様子を見守るために。

たぶん、最初の頃は、本当に私はおかしくなっていたのだろうと思う。
二人の様子を見ると、簡単にそう推測できてしまう。
それに・・・確かに、憶えていない。
「その直後」私はいったいどう過ごしてきたのか。
何をして過ごしてきたのか。
その記憶は戻らない。

でも、戻ってこなくて、いい。

今だって、思い出したくなんてないから。

 

憶えていない。

 

あなたがいない。
存在していない。

それは、わかる。

どうしていなくなったのか。
なぜ、いなくなってしまったのか。

それも、わかる。

どうやって、いなくなったのか。
あなたの最期・・・。

それも・・・わかってる。

 

だけど

憶えていない。

 

だって、あなたがいなくなったのに、世界のどこにもいないのに
なのにどうして私はここにいるの?
生きているの?

信じられない。

だって、あなたがいなくなったのに、私が生きているはずなんてないもの。

だから。

信じない。

あなたはどこかに生きている。
どこかで生きている。

 

だから

 

私は毎年、この時期だけは
あなたが生きている

思い込んで過ごしている。

おかしい?

現実から逃げている?

 

だけど
もし、あの時、間に合っていたら。
もし、あの時、犠牲になるのがあなたでなかったら。

今も、ここに
私の隣にいたはずだから。

他の誰でもだめなの。
あなたの代わりなんていないの。

あなたじゃなくちゃだめなの。
あなたじゃなくちゃいやなの。

 

どうして?

どうして、「あなた」だったの?

他のひとでも良かったじゃない

 

そうよね?イワン・・・

 

私はあなたを絶対に許さない。

 

彼を返して。
私のもとに。

 

そうしたら
それができたら
許してあげるわ、イワン。

 

だけど、それができないなら