−1−

私って、そんなに「お母さん」っぽいかしら?

鏡に映った自分の顔を見つめ、ため息をつく。
いつも似たような境遇の男性に好かれる。
両親のいないジョー。母を亡くしたカール。女性に裏切られたユウジ。
こちらは特に「そういうひと」を選んでいるわけじゃないのに。
それとも、どこか寂しそうなひとが、私は好きなのかしら?

違うわよね?

だって私は、カールを好きにはならなかった。

−2−


「ただいま」

買い物から帰ると、リビングにひとりポツンとジョーが居た。

「ジョー?博士たちは?」
「ウン。さっき、出掛けて行ったよ」
「あら。夕飯はどうするのかしら」
相変わらず、そういう事には気の回らないジョー。

「イワンも一緒なの?」
「ウン。何か、学者ばかり集まるみたいな事を言っていたよ」
「・・・そう」
イワンはまだ赤ちゃんなのに。いくら頭脳が学者と同じといっても、そんな集まりに連れて行くのはやっぱり賛成できなかった。

ジョーは窓から外を見ている。遥か彼方の海を。

「ジョー?」
何だか寂しそうで、思わず声をかけていた。

「・・・何を考えているの?」
「別に・・・ただ海を見ていただけ」
「そう。ならいいけど」

そっとジョーの肩におでこをつける。
「・・・大丈夫だって。本当に、なんでもないんだ」
「うん」
「フランソワーズこそ、どうかした?」

「ううん。・・・私ね、アナタに伝えたいことがあるの」

そう言った途端、ジョーの身体がびくっと揺れた。
ジョー?

「ふ、フランソワーズ?」

じっと凝視している。私の顔を。

「ジョー?いったい、どうしたっていうの?」

でも答えない。黙ってじっと見つめているだけ。
時々、彼の行動が理解できない時がある。そういう時は、放っておくしかないのだけれど。

お互い少し離れ、じっと見つめあったまま数分が経過した。
漸く、ジョーがおそるおそるといった感じで口を開いた。

「フランソワーズ・・・ほんもの?」
「――えっ?」
何を言い出すのかしら、このひと。

「何?・・・もう、バカなこと言わないでよ、ジョーったら」

そう言った途端、ジョーの眉間に皺が寄った。
「・・・フランソワーズ」
「何?・・・いったいどうしたっていうの?」


その時、体内で起爆装置が稼動した。

「――寄らないで」
ジョーを突き飛ばす。
「私をひとりにしておいて!」

「・・・フランソワーズ?」

わけがわからないよと言って伸ばしてくる手を避けて、邸の外に出る。

そして。

あとは閃光。

−3−


・・・ナゼダ?