「ブラインドデート」
〜3組のゼロナイ〜


―9―

 

きらきら輝る瞳で隣にいる男性を見つめ、すっかりリラックスしている様子の彼女。

優しく隣の女性の肩に腕を回し、自分の胸の中に引き寄せじっと見つめている彼。

 

 

――ああもう。何やってるのかしら。

 

フランソワーズは集合場所に着いてすぐジョーに気がついた。
先刻から、さりげなく彼を目の端で捉えたまま、目の前の彼と会話をしていた。

 

――もうっ。泣いちゃったじゃない、彼女。ほら、早く何とかしなさいよ。

 

はらはらしながら思う。
ジョーはいったい何をやらかしたのかと。
そういう目で見てみれば、そう、ジョーと彼女の距離――が、自分の時よりも若干近いような気がした。

 

――恋人同士でもないのに、そんなにくっつくから。
だから、彼女は泣いてしまったんだわ。

 

心のなかでため息をつく。

本当にもう、仕方のないひと。
泣かせた女の子にどう対応したらいいのかわからないみたいに、ただおろおろして。

おそらく、黙って肩を抱くとか、胸を貸すとか、彼の頭には浮かばないのだろう。
慣れているように見えて、実は女の子に慣れてない。・・・ような気がする、ジョー。
もてるだろうに何故なのだろうと思ったことはしばしば。
想像では、おそらく――何人とつきあっても、年月はもたなかったのだろうと思う。
それは何故なのかはわからなかったけれど。

それにしても、泣かせたままなんて。
せめてハンカチを渡すとか何か・・・ううん。ジョーはそんなの持ち歩いていないわ。

 

心の中でジョーに話しかけながら、しかし――フランソワーズはほっとしてもいたのだ。

女の子を上手に泣き止ませることができないジョー。

それは自分のよく知っている彼であり、もしも今、その彼が彼女を胸に抱き締めあやしていたら、自分はきっとここにはいない。

 

 

 

 

なんであんな涼しい顔をしているんだ。

 

ジョーはフランソワーズを見つけた途端、頭に血が昇った。
自分以外の男と一緒にいるくせに、いつもより綺麗なのが気に入らない。

しかも、相手が本当に大事そうにフランソワーズを守っているのも気に入らなかった。
それが完璧であればあるほど。

ふといま自分の腕のなかにいる女性へ目を遣る。
確かに彼女は可愛かった。フランソワーズにはない可愛さなのは間違いない。

でも――それだけだった。

可愛いなとは思うものの、だからどう・・・ということもない。

 

――さて。これからどうしようか。

 

そう思い、彼女に尋こうとして驚いた。

 

なっ??

 

なんで泣いてるんだ??

 

何もしていない。
肩を抱いているだけで、その力も変えてないし、引き寄せてもいない。

だって、僕のフランソワーズじゃないんだから。そんなことするわけがない。

でも、だったらどうして――泣いているんだ?

 

表面は涼しげに見える態度だったろう。
けれどもジョーは内心パニックに陥っていた。

女の子に泣かれるのは苦手なのだ。自分のフランソワーズでさえ、泣かれたらどうしようもない。
いや、自分のフランソワーズだったら、ともかくどう対応したらいいのかわかる。
何しろ彼女は、泣いたかと思うと次の瞬間には怒るのだ。
時にはビンタが飛んでくることもある。ちっとも痛くはないけれど。

目の前の泣いている彼女を前に何もできずにただ突っ立っていると、いきなりその肩を掴まれ――振り返りざまに顔面に拳を受けていた。