―3― 「新ゼロの事情」
「ジョー」 新ゼロフランソワーズが新ゼロジョーの頭をつんつんする。 「反省した?」 けれどもジョーは無言だった。抱えた膝頭に額をつけたまま動かない。すねているのかもしれなかった。 「お客様も来てるんだし、あなたも相手をしてちょうだい」 しかし、返事はない。 「もうっ、ちょっと鼻をつまんだだけじゃない。そんなに落ち込むようなこと?」 ジョーは小さく、そういう問題じゃないと呟いた。 「なあに?聞こえないわよ?」 再びダンマリをきめこんだジョーにフランソワーズはやれやれと息をついた。 「ねえ、ジョー。そろそろ反省するのもすねるのも切り上げてくれないかしら。これじゃあまるで、私があなたをいじめてるみたいじゃない」 ジョーは黙る。 「まったくもう。告白された相手に断るのが申し訳ないから、っていちいち相手の言うなりに付き合ってあげる癖はどうにかならないの」 ジョーはもてる。 ――それにしても限度があるわよ! 思い出したのか、フランソワーズの顔が少し紅潮する。 「映画。食事。ドライブ。みるひとがみたら、どれも間違いなく浮気よ?」 跳ねるように顔を上げたジョー。その鼻をつまんでフランソワーズは続けた。 「そうよ、違うのよね?知ってるわ。ジョーにそういうつもりはこれっぽっちもないって。でもね」 指先に力がこもる。 「それでも、やなものはやなの!」 ぱっと鼻を離すとジョーの額にデコピンした。 「ジョーのばか」 フランソワーズの腕を掴んで起き上がり、ジョーは神妙に言った。 「……泣くなよ」 泣いてない言い訳があまりにも古典的で、ジョーは笑ってしまった。 「うん。ごめんね、フランソワーズ」 言っている途中でクッションが飛んできた。 「ちがっ、そうじゃないってフランソワーズ!」
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―4―
そんな二人を旧ゼロと超銀のふたりの009は無言で見つめていた。
スリーと超銀フランソワーズがポツリと言う。 その声に、揃って背筋に冷たいものが流れたふたりのジョーだった。
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