「ねえねえ、見て――可愛いわねぇ」
「ほんと。・・・モデルさん同士かしら?」
「さあ。外国人ってどうしてこう綺麗なのかしらねぇ」
「片方はハーフなんじゃない?」
「・・・起きないわね」
「起きないね」


くすくす。


途中で乗ってきた学生たち。
沿線にある女子高の登校日であった。
彼女たちの注目の的は、とある外国人カップルだった。
並んで座り、お互いにもたれるようにして熟睡している。


「ねぇ・・・次は終点だよ。起きるかな」
「さあ。起こしてあげたほうがいいんじゃない?」
「でも気持ち良さそうだよね」

 

 

   

 

 

「ねぇ、ジョー。起きて」
「うん――?」

もう着いたのかと目を開けたジョーはそのまま声もなく固まった。

本来ならば、目の前に広がるのはビル郡のはずである。
決して海岸線などではない。
しかも――薄闇に染まっているではないか。


「・・・なんで」
「もしかして・・・」


この私鉄は同じ路線を往復するのだ。


「でもこの時間だと・・・いったい、何往復したのかしら?」


フランソワーズに言われ、ジョーが腕時計を見る。
乗ったのは確か午後3時頃だった。
そして今は――午後6時になろうとしていた。本来なら、30分で着くはずの道程である。


「さあ。何往復したんだろう?」


そうして顔を見合わせて。
どちらからともなく笑い出した。

 

 

   

 

 

「――あいつら遅いなぁ」
「泊まるんじゃねーか?」

ギルモア邸のリビングで、夕食を宅配ピザですませた面々は思い思いの格好で寛いでいた。
ポツリと言った言葉に平然と返され、ジェットは思わずハインリヒを見つめた。

「・・・それはまた、豪い親展したもんだ」
「いいんじゃない。彼らだってもう大人なんだし」

ピュンマが本を閉じて立ち上がる。

「明日の朝、盛大に出迎えてやらないと、な」

にやりと笑うと、一同は彼に向かって親指を立てて同意を示した。