「一年の計は元旦にあり」
    新年早々からミッションだなんてついてない。 とはいえ、だからといって家にいても寝正月になるのは目に見えていたからこれはこれで良かったのかもしれない。 だからね、新年早々ミッションっていうのもまあ悪くはない。 ただ、日本の諺で1年の計は元旦にありっていうでしょう。だったらこれからの1年はずっとミッションになっちゃうのかしらって、ちょっとそこが気になるところで… えっ? 意味が違う? そうなの? ジョーがくすくす笑うから、もう。いやなジョー。 「でも、もう帰るんだしこれから正月をやればいいさ」 まったくもう、ジョーってば。 そういうの、言わないでさらっと行動しちゃうのってホント困るわ。絶対、自覚症状ないもの。 さあ。どうかしら。 ジョーはハンドルに両肘をついて前方を見つめている。 夕陽を見ているよりジョーを見ているほうが好きなんだもの。 1年の計は元旦にありっていう意味が正しくはどうなのか知らない。 私は、こんな風にジョーの横顔を見ていたい。   夕陽が沈んでいく。   「さて。夕御飯はどこに行く?」 急にジョーがこっちを向くから、ばっちり目が合ってしまった。 「ん、どうかした?顔が赤いよ」 横顔じゃなく、目と目を合わせていたい、って。   夕陽が沈んで暗くなったら、ジョーが甘えるみたいにキスしてきた。   ん…そうね。 ほんと、きりがないわ、ジョーと居ると。 見つめていたい。 キスしていたい。 一緒にいたい。 ずっと ずっと。 そんな一年に――なるといいな。  
   
       
          
   
         ジョーはコタツが大好きで、冬はそこから離れない。
         それは日本人の特性なんだよと言うけれど、たぶん絶対嘘だと思う。
         まあ、私だってコタツは嫌いじゃないけれど、でもジョーと一緒にコタツにいるといつも展開が決まっていて……え、と、それも別に嫌いじゃないけど、でも、ええと…そう、建設的じゃない。でしょ?
         「そうだよ。日本語って難しいんだよフランソワーズ」
         そう。既にミッションは終わっている。
         今回はミッションとはいっても、噂の真偽を確認するだけの調査だったから、私とジョーの二人で行った。たまたま日本にいたのが私達だけというのもあるけれど。
         ジョーのストレンジャーで出動…なんていっても、防護服から平服に着替えてしまうとただの長距離ドライブのよう。
         そんな気持ちを見越したのか、ジョーは帰り道に夕陽を見ようと見晴らしのよい場所に車を止めた。
         あなたのそういうトコロが異性からの萌えポイントなのよ。気を付けなさい。
         「初日の出を見られなかった代わりになるかな」
         私はそんな彼の横顔を見つめていた。
         だから夕陽なんて見ていないし、どうでもいい。
         ううん、もちろん、こんなシチュエーションはロマンチックだし好きよ。でもね。
         でも、例えば元旦に「こうしよう」って決めた通りに1年が過ぎるのだとしたら。
         「え、夕陽のせいよ」
         「あ、そっか。そうだよね」
         んもう。
         訂正するわ。
         こうしてキスしていたい…っていうのもいいかもね。
         だって、全部好きなんだもの。
