「おはようのキス」

 

 

蒼い瞳は空の蒼。

真っ蒼な空。

澄み渡った空気。

 

今日も朝がきた。当たり前のように。

目を閉じて、そして開けたら、朝だった。

 

 

**

 

 

私の彼はとてもナイーヴなの。
傷つきやすくて寂しがり。

でも、自分ではそうは思ってない。
自分のことを全然わかっていないひと。
だから平気で「僕に近付くな」なんて言う。
自分が居るのは「闇」だから、きみをそこに引き込みたくない・・・とか、格好つけて言ったりする。
もしも本当に「闇」に居るのだとしても、そこから出たいくせにそれが怖くて出来なくて、自らその「闇」の中に留まっていることにも気付いていない。
まるで、自分は好きでそこにいるんだ、と言わんばかりに。

だけど、それは嘘。

本当は出て来たいの、こちら側に。なのに、どうやって出たらいいのかわからない。
ほんの少し、踏み出すだけなのに。

私がいるじゃない。

手を離したりなんてしないわ。
ずっとそばにいる。
だから、何も怖くないのよ?

もしも、あなたがそこから出て来なくて、私をあなたの言う「闇」に引き込もうとするなら、私は必ず一緒に行くわ。
どこまでも一緒。

だから、怖くない。

あなたが闇の深淵をのぞくなら、私も一緒にそこに立つわ。
ずっとそばにいる。

それにね、ジョー。あなた知らないでしょう?
闇の中でも、光は消えてなくなったりなんかしない。
小さくても、足元くらいは照らすことができる。
そして、その光は闇の中でこそ意味をもつの。

私が「光」であなたが「闇」だというのなら、私がいるときっと重宝するわよ?
それに、あなたが思っているほど「闇」って怖い所じゃないわ。

案外、良い所よ?

 

 

**

 

 

「おはよう、ジョー」

 

目の前には空の蒼。
優しく僕の名前を呼ぶ。
僕を闇から朝の光の中へ連れて行く。

だけど、僕は忘れない。
きみが一緒にいてくれるからこそ、僕は光の中へ行けるんだということ。

 

「――もう。おねぼうね?」

 

柔らかい唇が、額に頬に押し付けられる。そして最後に唇へ。

 

そろそろ光の中へ行く時間だ。

僕は闇を後にする。

全ての「闇」を置いてゆく。

例え、一時的なものであっても。

 

「おはよう、フランソワーズ」

 

 

 

 

 

 

 

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