「おうちでゴハン」
―1―
「ねぇジョー。今日、ジョーのとこに行ってもいい?」 いつものように「いってらっしゃい」のキスを頬にしたあと、フランソワーズはきらきら輝く瞳でジョーを見つめた。 「僕のとこ?」 背伸びしていたのを元に戻して。 「・・・その、ジョーの部屋を貸してもらいたいというか」 ちらりと背後を気にして、廊下の向こう、リビングにいる誰もこちらに注意を払っていない事を確認する。 「・・・ひとりで観たいの」 ジョーは小さく笑むと、フランソワーズの頭に手をのせた。 「わかった。いいよ、自由に使って」 全身で喜びを表すかのようにハグしてきたフランソワーズをジョーは上手にかわす。 「ダメだよ、ほらっ・・・」 ジョーの顔が赤くなる。それを見て、フランソワーズも頬を赤らめた。 「ん、そうね。・・・でも、嬉しいの。ありがとう、ジョー」 フランソワーズは「家」という概念を持たないで生きてきたジョーに、いつか「家」は温かくて寛ぐ場所だということをちゃんとわかってもらいたいと思っているのだ。だから、そういう機会は逃さないようにしていた。 「・・・そうだね。わかった。じゃあ、帰る時連絡するよ」 ・・・これってなんだか新婚さんみたいじゃない? 一瞬、顔を見合わせる。 「・・・じゃ、行ってきます」 フランソワーズはジョーの背に手を振った。
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―2―
「――えぇと、確かこのへんに・・・」 ジョーのマンションである。 「あ!あった!」 ウォークインクローゼットの奥の奥。フランソワーズはダンボール箱を抱えて出てくると、密封されていたそれを解いた。 「・・・ふうん。ジョーはあの後観てないんだ」 ずうっと前に、自分がしまった時のままのようだった。たぶん、彼はあの後は手もつけていないだろう。おそらく、これがどこにしまってあったのかも知らないのに違いない。 「・・・・っ」 扇情的なタイトルを観ると、さすがに自分はとんでもないことをしようとしているのではないかと我に返りそうになる。しかし、ううん、これは自分のためであり、ジョーのためでもあるのよ!と叱咤激励する。
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