「絶対、見つけるんだから!」
妙に気負った声で言われたのは、ある日の午後のことだった。
ぽかぽかと暖かい春の陽気に誘われて、僕とフランソワーズは近くの公園へやって来ていた。
特に何をするというのでもなく、ただのんびりぼんやりと景色を眺めたり話をしたり。
そうして過ごしていた時、ふとフランソワーズが傍らを見遣り目を輝かせたのだった。
「ね。四葉のクローバーがあるかもしれないわ」
そうして身を屈めて四葉を捜し始めたのだった。
僕はそばのベンチにゆったりと座り、その光景を眺めていた。
瞳を輝かせ、四葉探しに夢中になっているフランソワーズ。
少々子供っぽいけれど、そこが可愛くて僕は目を離せなくなってしまった。
およそ10分経った頃だろうか。
「あったわ!」
フランソワーズが声を上げてこちらを見た。
「ジョー、見て。四葉のクローバーよ」
僕はフランソワーズの隣に屈むと指差す先を一緒に見た。
確かに四葉のクローバーだった。
「…幸運のお守りだったっけ」
「そうよ」
頷くフランソワーズに、僕がクローバーに手を伸ばし摘み取ろうとした時だった。
「駄目よ、ジョー」
凛とした声に動きを封じられた。
「え。だってお守りなんだろう?」
「ええ。でも駄目」
「せっかく見つけたのに?」
「ええ。――いいの。これはここにこのままで」
でも…幸運のお守りって身につけなかったら意味がない。
「私だってそこまで少女趣味じゃないわ」
フランソワーズはくすりと笑って続ける。
「自分のために探していたんじゃないし、ジョーのためでもないの。これはね、…またここでこうしてジョーとふたりでゆっくりした時間を過ごすことができますようにっていうお守りなの。だからこのままここに在って欲しいの――変わらずに」
じっと四葉を見つめ――そうして、そっと瞳を閉じた。
「来年もその先もずっと…ジョーとこうしてここに来ることができますように」
フランソワーズのその願いは果たして重いものだろうか。叶わぬことだろうか。
あるいは、じゅうぶんに少女趣味だと笑うだろうか。
僕はどれもしなかった。
ただ、彼女が変わらぬ未来を望むのなら、僕は今のこの瞬間を守りたいとそう思った。
だからそっと――フランソワーズを抱き締めた。
春の風が僕達を包んで流れていった。
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