「膝の上」
「――発進する。みんな配置についてくれ」 009の声に、操縦席付近に集まっていたゼロゼロメンバー達が各々の席へと散ってゆく。 ――と。 「003。君もだ」 そう言って009の首に腕を回し、びくとも動かない。 「・・・フランソワーズ」 諦めて、操縦桿から手を離す。 膝の上に003を乗せたままでは。
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003は009の膝の上で、安心したように静かになっている。 普段、みんなの前でこういう行動をとらない003だったが、今回は別だった。 全ては今回のミッションに起因する。 発進準備が整うまでの間、009は仕方なく自分の膝の上に003を抱いていたのだが
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困った。 これでは発進できないし、操縦だって無理だ。 かといって、彼女を自分から引き剥がすのも無理な話だった。 「――ジェット」 首を巡らせて002を手招きする。 「おう――何だ」 009の方に向かいかけていた002は、空中に片足を上げたまま固まった。 「じ・・・冗談じゃねぇっ、無理無理」 両手をひらひらさせて、そのまま後退する。 「俺に003のお守りが務まるかよっ」 「ば。――違うよ、002」 009はため息をつくと、よっこいしょと003を抱き上げ立ち上がった。 「――大丈夫。離れないよ」 003の耳元に優しく囁いてから、改めて002の方を向く。 「操縦を代わってくれ」 おどかすなよ、とブツブツ言っているのを横目に、009は003を抱いたままデッキを後にした。 「どこ行くアルね」 ドアが閉まる一瞬、肩ごしに振り返り、 「――あやしてくる」 妖しい笑みだけを残し・・・消えた。
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静寂。 「オイオイオイ。何だよ今の」 考え込む一同。 意識は当然の事ながら、閉まったドアの向こうに集中する。 「・・・とりあえず、帰ろうや」 「そうだな」 002が操縦桿を握る。 「――っと。揺れないようにしてやった方がいいのかな」 ともかく――そうっと静かに発進し、ドルフィン号は滑らかに空に昇った。
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009と003がどう過ごしていたのかは・・・ 以後、ソノ件には誰も触れなかったので未だ不明のままである。
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どう過ごしていたのかは大人部屋にあります。