「ジェラシー」
ジョーの過去が気になったのは初めてだった。 もちろん、今まで気にならなかったわけではない。 きっかけはささいなことだった。 明らかな存在感を持って私に迫ってくる。 今まで、知る必要はないと思ってきたこと。 それらが今、私に向かって問いかける。 そうわかっているけれど。 醜い炎。ジェラシーという名の。 だから私はジョーに訊かなければならない。 真実を。 ジョーの、女性遍歴を。
―1―
ジョー自身、あまり語りたがらないから詮索しなかった…というのが正解。
それに、それだって何も特殊な過去が気になるわけではなくて、その生い立ちからジョーの人となりを知りたい、ただそれだけだった。
なのに。
今は違う。
でも、幾つもの「ささいなこと」が積み重なってゆくと、それはどうにも無視できなくなってしまった。
知らなくていいと目をつむっていたこと。
本当に知らなくていいの?
と。
でもきっと、それに負けて彼に問い質してもいいことなんて何もないだろう。
このまま、こんな気持ちをやりすごすのが正解。
胸の奥にある黒い炎には勝てそうになかった。
負けたくはなかった。
でも……ここが限界なのかもしれなかった。
勝手に誤解して邪推して彼を遠ざけてしまう前に。