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「えっ?」


ジョーがきょとんとして私を見た。


「だから、あの……」


なんだかいたたまれず、私は顔を背けていた。
別にやましいことなんて何もないのに。

ジョーは私の手を取ると、再び歩き出した。
何も言わない。

だから私は地面だけを見ていた。

答えがないのが答えなのかなと思いながら。

 

今日は二人でショッピングに来ていた。
といっても特に買いたいものがあったわけではなく、ただ一緒に歩きたかっただけだった。
あちこちにクリスマス仕様のデコレーションがあるから、それを見付けて歩くのがしたかったのかもしれない。
ともかく、二人で意味のない事を喋り、目的もなく街をさまよった。
予定にとらわれない二人の時間。
それはとても楽しかった。
だから、訊くなら今しかないと思ったのだ。
こうして雑踏に紛れてふつうのカップルと見分けがつかない今なら、何があっても大丈夫だから。
もしも泣いてしまっても、喧嘩になっても、雑踏に紛れてしまえるから。
だから、静かな場所で話すより断然いいと思ったのだ。

しかし。

ジョーは何も答えてはくれなかった。

 

しばらく地面を見ながら歩いていたら、不意にジョーが立ち止まった。

「フランソワーズ、見てごらん」

言われて顔を上げると、目の前には大きなツリーがあった。

「すごいね」
「……そうね」
「いったい、何人で飾りつけたんだろう」
「ジョーったら。綺麗なのよりそっちが気になるの?」
「ならないかい?」
「ならないわよ」

もう、ジョーったらと笑うと、ジョーが安心したように言った。

「良かった。やっと笑ったね。急に黙るから心配したよ」

それは、あなたが何も答えてくれなかったからよ。

そう思ったけど、言わなかった。
たぶんジョーは答えたくないのだろうし、答えられないのだろう。
それが答えなのだから。

ジョーに答えるつもりが無いのなら、それでいいのかもしれない。

今まで通り、そんなの気にしてないし知る必要もないわって顔をして。
そうして過ごすだけ。

それだけのこと。

だって私が期待している答えは――望んでいる答えは、「そんなことないよ」ってジョーが否定してくれることだけだから。
だから、ジョーが正直に答えてくれたとしても、それが私の望む答えではなかったら、私は質問したことを後悔するだろう。
なぜ訊いてしまったのだろう、と。
そしておそらくジョーも、なぜ正直に答えてしまったのだろうと落ち込むだろう。
そうやって二人の間に溝ができるのは確実で、だからジョーは答えずにいてくれた。

答えないこと。

それこそが、ジョーの私に対する気持ちなのかもしれない。

だったら、それでいいではないだろうか。
ジョーの過去に何人の女性がいて、何人とどんな関係を築いてこようとも、それは――私が知らないですめばいいことなのだ。

きっと、知らないほうがいいに決まってる。