「こら、ジョー!?」


目の前でぱちんと手を叩かれ、僕は夢想から現実に引き戻された。


「・・・あれ?」
「あれ?じゃないわよ、もうっ」


テーブルの向こう側にいる彼女が大仰に肩をすくめる。


「また妙なこと考えてるでしょう?」
「別に・・・考えてないよ」
「嘘よ。そういう顔してたもの」


僕は口を結んでダンマリを決め込んだ。
まったく、何が楽しくて僕を追い詰めるようなことを言うのだろう。


「――まったくもう。フランソワーズは強い人だから、僕がいなくても平気だろう・・・なーんて思ってたんでしょ?」


凄いな。図星だよ。


「生憎だったわね。フランソワーズはそんなに強い人じゃありません。あなたがいなくなったらそれはもう、身も世もないほど泣くわよ?」
「そうかな」
「そうよ。それに、もしそれでも強い人だというなら、それはあなたがそばにいるからよ」
「・・・フランソワーズが強いのは僕がいるから?」
「そう」
「彼女はもともと芯が強い女性だよ」
「そうかしら。あなたの力になりたいって頑張った結果だと思うけど」
「・・・そうかな」
「そうよ。本人が言うんだから信じなさい」


にっこり笑った僕の恋人。

目の前のその蒼を見つめ、僕も一緒に笑った。


「・・・そっか。君は僕がいるから、強いんだね」
「そうよ。いなくなったら、ただの泣き虫よ?」
「ふうん。同じだね」


本当は、心細くて甘えたくてのただの泣き虫な僕とその恋人。
だけど、お互いが居る限り誰よりも強くなれるんだ。

僕を強くしてくれるのが彼女。

彼女を強くしているのは僕。

作用と反作用。

それで均衡が保たれているのなら、きっとどちらが欠けても駄目なんだ。

 

「ずうっと一緒よ?ジョー」

 

うん。

そうだね。フランソワーズ。