レーサーになりたかった。

F1パイロットになって、チャンピオンになるのが夢だった。


そして今、その夢が叶った。
叶ってしまえば、それで終わりだと――思っていた。


でも、違う。


僕には他にもっと大事な夢がある。
夢だけで終わらせられない、絶対に叶えたいもの。叶えなくてはならないもの。

それ以外は考えられないもの。

 

それは。

 

 

 

 

 

 

「・・・フランソワーズ。僕は・・・」


隣で眠りについたフランソワーズの髪を撫でる。
細くて柔らかい亜麻色の髪。とても人工毛髪とは思えない。


僕の一番の夢は、君を守りきること。


なにがあっても。

なにがおこっても。

僕は、君を守る。そう決めたんだ。
絶対に死なせはしない。怪我もさせない。君を傷つけるもの全てから僕は君を守る。

でも、それは・・・自分で決めたものの、時々とても不安になる。
君を守りきれる自分でいられるのかわからなくなる。

 

だから、フランソワーズ。


時々は甘えてもいいかな、君に。
僕は君をちゃんと守れているかい?って。


この前、そうジャン兄に訊いたら直接訊けって怒られたよ。
君が幸せそうに笑うのなら、ちゃんと守れているんじゃないか――って言ってくれたけど。

 

ねえ、フランソワーズ。どう思う?