「ジョーの起こし方」
「ジョー。おーきーて」
ジョーは小さく唸ると声のした方に背を向けた。
「ジョーさん。起きてください」
再度、耳元で言われる。さきほどよりも大きな声で。
だからジョーもさきほどより大きく唸ると、上掛けを額まで引き上げた。
「ジョー、起きなさい!」
いきなりの大音量と共に剥がされた上掛け。
情けなく丸くなるジョーの姿が露わになった。
「今日はデートしようって言ったのはアナタでしょう!出かけるのは何時ですか。夜中ですか」
「・・・いま、何時?」
目をこじあけるように開くと、そこには怒っている恋人の姿があった。
「昼の2時よ!」
「え!」
怒った顔も可愛いなあとぼんやり思っていたジョーは、その怒った顔も可愛い恋人から衝撃の事実を告げられた。
「うそっ」
慌てて跳ね起きた。
混乱した頭で、まずなにからするべきか考える。が、寝起きなのと驚いているのとで優先順位がつけられない。
だから、意味もなく室内を行ったり来たりした。
「ごめんっ、フランソワーズ」
とりあえず、まず謝るべきだろうとフランソワーズに頭を下げた。
今日は紫陽花を見に北鎌倉に行く予定だった。
早起きして混む前に行こうねと約束していた。
「ゴメン」
おそるおそる顔を上げると、そこには怒った顔も可愛い恋人ではなく、いつもの笑顔の恋人がいた。
「なあんてね。驚いた?」
「・・・え?」
「実はまだ朝の6時でした!」
「な・・・」
ジョーはヘナヘナと膝をついた。一気にちからが抜けてゆく。
「目が覚めたでしょう?」
「ああ、・・・まあね。でも」
こんな斬新な起こし方は今回きりにしてくれ。
「あら、だったらいつも自力で起きてちょうだい」
「それは無理」
きっぱり答える寝ぼすけな恋人にフランソワーズは溜め息をついた。
ハリケーン・ジョーの時は起きるくせに。
009の時も起きるくせに。
なのにどうして島村ジョーの時はダメなのかしら。
ね?甘えんぼさん?