「風のせいよ」

 

「風が強くて眠れないの」


ドアを開けたら枕を抱えたフランソワーズがいた。
少し困ったように首を傾げて。


風が強くて眠れない。

つまり、風が強くて音がうるさいと、そういう意味だろう。
確かに彼女の特性上、風が強く吹く日は辛いだろう。


「・・・ドウゾ」


ジョーが体を退くと、フランソワーズは部屋の中へ入った。


「でもフランソワーズ」

自然現象は僕にもどうにもできないよ?


風が強いのをどうにかするなど無理である。


「いいの。・・・だって」


ジョーの肩に鼻先を埋めて、フランソワーズは小さく言った。


「・・・ただの口実だもの」