第27話「美しく生きよ!愛しき王女」
エスケープ

 

−プロローグ−

 

気付いたら、横浜の雑踏を歩いていた。
慣れ親しんだ街を、ただあてもなく。
そぞろ歩く人々にまぎれて。
周囲には、カップルや家族連れがあふれ、幸せそうに言葉を交わしている。
目の前を行く二人連れの女性が、ショーウィンドウを指差し立ち止まる。
ふと目をやると、そこには大きなポスターが飾られていた。

綺麗な色だった。

胸の奥が、ふっと温かくなる想い。
一瞬だったけれど、僕はその想いを抱き締めた。
決して逃さないように。

 

 

 

 

僕は疲れていた。

闘いの日々は続き、終わることがない。
戦闘用サイボーグの自分は、ずっと戦い続けなければならないのだろうか。

・・・何のために?

望んでそうなったわけではないのに。

 

『一日でいいから、違う自分になってすごしてみたいわ』

 

喫茶店を出るとき、耳に飛び込んできた言葉。
店員のお喋りの断片。

 

一日でいいから。

違う自分に。

 

・・・なれるものなら。

 

サイボーグであることを忘れ、ただの島村ジョーとして過ごせるものなら。
一日だけでいいから。
全てを忘れて。