気付くといつも隣にフランソワーズがいる。

だけど、最近は話しかけてこない。
ただ、どこか不安そうな、心配そうな目で僕を見つめるだけ。
空と同じ蒼い瞳で。

僕はこの蒼い瞳が好きだ。

だけど、今は同じくらい、この海と同じエメラルドグリーンの瞳も好きだった。
望んでも二度と会えないと知っていたけれど、だからこそ想いは募っていった。

ごめん。フランソワーズ。
君のことは好きだ。
だけど。

君と一緒に居ると、否応なく「サイボーグである自分」を意識させられてしまう。

君のせいじゃない。

そうではないけれど。

僕はキャシーと一緒に居た時に感じた「何者でもない、ただの自分」をもう一度感じたかった。
サイボーグとしての島村ジョーではない、ただの島村ジョーとしての自分を。

そのためには・・・君と一緒には居られない。

君のことは好きだけれど。

決して、君のせいではないけれど。

だけど。

今は、一人にして欲しかった。

 

 

 

 

「・・・・!!」

まさか。

 

思わず立ち上がっていた。
椅子が背後で倒れる。

「ジョー?どうしたの?」

どうしたかって?

 

TVの画面にはキャシーの姿。

会いたくて仕方なかった彼女が映っていた。

君は一体何者なのかと思ってはいたけれど、まさか。
まさか、王女だったなんて。

 

僕はただ立ち尽くしていた。TVの画面が切り替わっても。
僕の横顔をじっと見つめるフランソワーズに気付かずに。