今までいつも隣にいた彼女がいない。
僕を呼ぶ声も、ない。
ピュンマに守られているフランソワーズを見て、何とも思わなかったといったら嘘になる。
だけど僕は009だから、リーダーだから、平気なふりをした。
むしろ、ピュンマに守られてて良かったよ。という態度で。
一時的なものだと思ったんだ。
たまたま、違う場所に居ただけだ、って。
だけど、そうじゃなかった。
Xポイントに戻ってからも、僕は落ち着かなかった。イライラしていた。
どうして君は僕のそばを離れていたのか。
君を守るのは僕だろう?と、君を責めた。
すると彼女は、誰もあなたに守ってくれなんて頼んでいないし、決まってもいない。
あなたが加わる前は、ピュンマとジェロニモが守ってくれていた。
それに他のメンバーだってちゃんと守ってくれるわ。と、負けずに言い放った。
だから僕は、つい言ってしまったんだ。
「そうだな。彼らの方がちゃんと君を守ってくれるかもしれないな。
僕みたいに、みすみす君をさらわれたりとかそういう事もないだろうしな」
「・・・何の話?」
「別に。君の言う通り、他の奴の方がいいって言っただけだ」
「・・・ジョー?」
「僕は特殊能力がある訳じゃない。別に僕じゃなくたって、いいんだよな」
蒼い瞳がじっと僕を見つめる。
「わかったよ。・・・003」
そう言って、僕は彼女に背を向けた。
彼女は「003」だ。
ゼロゼロナンバーの中のひとり。
守るのが僕じゃなくても大丈夫。
僕は、君に必要ではない。
僕は彼女にとって、特別でも何でもない。
僕が彼女を見つめ、彼女を守っていたから、そうさせてくれていただけで。
彼女は優しいから、言い出せなかっただけなんだ。
もう要らない、と。
今まで、僕を見つめて、僕を抱き締めてくれていたのは・・・ただの同情?
・・・かもしれない。
そう認めてしまうのにはひどく勇気が要ったけれど。
だけど。
誰にでも優しい彼女のことだから。
僕の気持ちを知って、冷たくできなくて、流されて仕方なく・・・今まで一緒に居てくれていただけなのかもしれない。
僕が、自分の都合の良いように考えていただけで。
・・・だけど。
君が、そばにいない。
君の、声がしない。
君の温もりも感じられない。
僕を包んでくれていた君の優しさが、今は無い。
僕は「ひとり」だ。
そんな孤独には耐えられない。
だから。
僕は彼女を好きじゃない。
仲間のひとりとしか思ってない。
君への気持ちに気付いた日、そう決めたように。
君への気持ちは封印する。
僕は君を好きじゃない。
仲間として、好きなだけだ。