僕に差しのべられる優しい手は、もう、ない。
僕を待っていてくれるひとも、いない。
仲間として与えられる優しさだけ。
僕には、それしか、無い。
・・・それだけじゃ、全然足りない。
僕は「ひとり」だ。
一度なじんだ場所から、元の所に戻るのは何て難しいんだろう。
ただ、元に戻るだけなのに。
昔居たその場所は、ひどく冷たく暗いところのように思えた。
今まで、温かくて明るくて、幸せだったから。
それを全て失った。
目の前から消えてゆくのを見るのが怖くて背を向けた。
君を守るのが、君のそばにいるのが、僕じゃなくてもいい。だって?
僕は君に必要ない、だって?
・・・逆だったよ。
僕に、君が必要だったんだ。
僕が、君を守りたくて。君のそばにいたくて。
いつでも振り返ったら君がいると思っていたから、安心していた。
君は去らないとわかっていたから。
だから
君が僕から去ろうとしていた時、僕は怖くて背を向けた。
嫌だ。
行かないで。
それすら言うことができなかった。
言っても拒絶されたらと思うと怖くて。
だから、背を向けた。
失くすところを見なくてすむように。
・・・精一杯の、強がり。