「どうして何も言わなかったの?」
「だって・・・」
うつむいてしまうジョーの顔を両手で挟んで見つめるフランソワーズ。
「・・・フランソワーズに、嫌いって言われてショックだったから」
また涙を浮かべているジョー。
「もう・・・ばかねぇ」
ぽろぽろ泣くジョーを抱き締める。
「ばかなんだから」

(〜しばらくお待ちください〜)
(ジョーがひっくひっく泣いているので喋れませんのです)

落ち着くまで、しばらく待って。
「・・・もう、浮気したら嫌よ?」
「してないよ浮気なんか」
「したでしょ?」
「してないよ」
「王女さまとちゅーしたでしょ?」
「・・・・・・」
「ほら。浮気じゃない。・・・ってゆーか、何でそこで『してないよ』って言わないのよっ」
今度はフランソワーズの瞳に涙の粒が盛り上がってきました。
「・・・あ」
「もう、ジョーのばかっ。嫌いっ」
「ゴメン」

(〜しばらくお待ちください〜)
(今度はフランソワーズが号泣しちゃっているのです)

しばらくしてから。
「・・・どんなちゅーをしたの?」
「え」
「何回、したの?・・・嘘言ったらわかるからね。嫌いになるわよ」
「えーと・・・1回」
訊いたのは自分のくせに、やっぱり胸が痛くなるフランソワーズ。
一瞬、顔がゆがみます。
「・・・いつ?」
訊きながら、はらはらと涙がこぼれてゆきます。
「パーティのとき。・・・でも、してないよ。しようと思っただけで」
訊いてないのに余計な事まで喋るジョー。
嘘つけとか嘘つくなとか、もう訳がわからなくなっていたのでした。
「今頃嘘言っても遅いの。・・・どんなちゅーをしたの?」
恋人のキスだったらどうしようっ・・・!
訊いておいて、唇を噛み、ジョーの言葉を待つフランソワーズ。
ジョーはまたバカ正直に言うのに決まってるもの。
「え。どんな、って・・・」
「・・・ちゅーだけじゃないんだ?」
「ちがっ・・・!何言うんだよっ!!」
さすがにジョーも怒ります。