ゆっくりと、混濁していた意識が表層に浮かび上がってくる。

ここは・・・どこだったかしら。
私は一体、何をしているの。

凄惨な光景がフラッシュバックする。
硝煙と血の臭い。向けられる凶器。

眼を開けるとそこは見慣れた場所だった。
じっと天井を見つめて、小さく息を吐く。
そこはメディカルルームだった。

ああ、そうか・・・
私、倒れちゃったんだ。

ジョーはどうなったかしら。
無事、かな。

頭をゆっくりと左右に振って、隣のベッドに彼の姿を探す。
そしてベッドサイドに佇む彼を見つけた。

・・・ジョー?

声に出そうとして異変に気付いた。

なんか変。
ジョー?
どうしたの?

いつもだったら。
私が眼を開けたらすぐに近づいて、優しい瞳で見つめてくれて優しく声をかけてくれるのに。
「大丈夫?フランソワーズ」って。そっと手を握りながら。
なのに。
いま、彼はただ黙って立っている。そばにも来てくれない。
私の意識が戻ったことには気付いているはずなのに。

表情は前髪に隠れて見えない。
唇は一文字に結ばれている。