「ジョー、お願い、こっちに来て」
顔を見せて。

そう言っても彼はこちらに来なかった。
扉のそばに、私に背を向けるように立っているだけ。

 

もし、以前の私だったら。
きっと泣いていたと思う。ジョーにこんな態度をとられたら。
でも。
今の私は平気だった。
何も不安に思わない。悲しくなったりも、しない。
だって「あなたを愛している自分」に自信を持っているから。

あの森林でメガロが教えてくれた。「自分の愛を信じろ」と。
メガロは自分の愛した人を信じ切れなかった。即ち、自分の愛を信じなかったのだ。
私もメガロに教えられるまで信じきれていなかった。
だってジョーは、もし彼を撃ったのが私ではなく他のひとでも同じように言葉を尽くして優しく言うはずだから。
君のせいじゃないよ。君は悪くない。と。
相手が誰であっても。
彼は優しいから。
だから私は、私だけが特別扱いされている訳じゃない。という事実にいつも不満だった。
表面では平気な顔をして取り繕っていたけれど、本当はいつもいつも気になって仕方なかった。
彼のことを信じきれていなかった。

でも。
今は、信じている。
彼の言葉のひとつひとつを。
もし彼が、誰に対しても同じ言葉を同じように言っていたとしても、私は信じる。
彼の言葉と彼の気持ちを。