第43話「あばけ!三兄弟の秘密」
紫煙
ひどいわ。
目を逸らすな、なんて。
私は誰が傷つくのも見たくないのに。
戦うのだって、戦う姿だって、誰のものも見たくないのに。
綺麗事だってわかっているけど。
でも。
ひどいわ。
ジョー。
イワンの頑張りで、ネオブラックゴーストの三兄弟の出身地がわかった。
翌日、チベットへ飛ぶため、ゼロゼロナンバーサイボーグたちはそれぞれの部屋でその準備をしているところだった。
ジョーはドアの前で途方に暮れていた。
ノックをしても、呼んでも、返事がない。
ドアには鍵がかかっている。
でも、部屋に居るのはわかっていた。
「・・・フランソワーズ。居るんだろう?」
フランソワーズは部屋の中で膝を抱えて座っていた。小さく小さく。
――会いたくない。
今日は。今は。・・・会いたくない。
明日からは否応なしに一緒に行動しなければならない。
だから、今は。
――会いたくないの。
やがて。
ジョーは諦めて、ドアの前から離れて行った。
息を詰めていたフランソワーズはそうっと息を吐き出した。
ジョー。
あなたは時々、とても残酷なことを言う。
それは、全てに於いて正論ではあるけれど。
だけど、他の答えもあるのだということをわかって欲しい。
私は仲間の誰かが苦しむところを見たくない。
勿論、目を逸らしたところで何が変わるわけでもない。
逃げているだけだ、って自分でもわかっている。
・・・でも。
あなたの胸の中で、あなたの背に庇われて、辛い事から守って欲しいと思うのは私のわがままなのかしら。
「戦士」なのだから、とあなたは言うかもしれない。
確かに私は「003」に間違いない。
だけど。
その前に「一人の女性」でもあるの。
ね。
ジョー。
あなた・・・忘れてない?