真っ白い光。
ひとつの影。
――それは、先端の尖った何かだった。
視界いっぱいが「それ」になって、そして目に、
「おっと」
動かないのだ。 手も。 足も。 頭も。 身体が重い。
――えっ? 「おやおや、まさか私を忘れたってことはないよね」 …誰? 「マスクを外せばわかるかな。…っと、手術中だから外せないんだなこれが。でもきみならわかるはずだ」 …………。 「僕のこと。わかるよね?…フランソワーズ」 ―――!? 「目は痛くないかい?」 ……。 「見える?聞こえる?具合がおかしかったら言ってくれ。直すから」 ―――。 「…フランソワーズ。僕はきみを助けたいんだ」
――。
―――知っている。
だってこのひとは。 私のことをよくわかってくれているのだから。
誰よりも。
…私よりも。
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『目や耳の不具合があったら僕に言ってくれ。すぐに直すから』
私は「003」と呼ばれている。 だから、絶対に生き残る。
『003――フランソワーズ、聞こえているかい?』
「ええ、聞こえているわ」
それに――彼は、優しかった。 ブラックゴーストなのに。 私を改造した奴なのに。
私の目を覗き込む真剣な瞳。 『うーん…眩暈は出てないよね?』 我慢。 もうちょっと、っていったいどのくらいなのだろう。 何秒? 何分? 何時間? 何日?
…何年?
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「久しぶりだね。フランソワーズ」
笑い声。 「僕にはやりたい研究がまだまだ残っているんだ。だからそれを完成させないうちは死ねない」 更に笑い声。 「なのに、酷いよなぁ。フランソワーズ。僕を置いて逃げちゃうなんてさ」 ――。 「いったいどのくらい捜したと思うんだい?」
まさか、あれからずっと――捜していたというの?
…イヤだ。 「うん?イヤかい?でも駄目なんだ。きみは僕に協力するよ、きっと。絶対」 ――しない。絶対にするもんか。 「だって、しないとね。死んじゃうよ?きみの仲間」 ――え? 「もちろんギルモア博士も、ね」
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