「過去を知りたい、知りたくない」
〜お題もの「恋にありがちな20の出来事」より〜

 

あなたが言いたくないことだったら訊かない。

それはおそらく、私が知らなくてもいいことだから。


あなたが忘れたいことは私も忘れる。

だってそれは、ふたりにとって憶えていなくてもいいことだから。

 


私はずっとそうしてきた。


誰よりも大事なのはジョー。
大事なジョーが嫌がることを聞き出したりなんてしないし、それに――彼の過去に興味はないわ。
好きだから彼の全てを知りたいなんて、「好き」という言葉をいいように解釈しただけのただの身勝手な願望に過ぎない。
私は自分のつごうで彼のことを根掘り葉掘り知ろうとは思わない。
ジョーが話したいと思ったら聞く。それだけでいい。


ジョーが昔どんな育ち方をしたのか、鑑別所に入るきっかけになった事件は何なのかとか、その鑑別所でどう過ごしていたのかとか。
そんなことは、私が知らなくてもいいこと。
ジョーが話したくなったら話してくれることだし、話したくなければそれでも全然構わない。

大事なのは、いまのこと。

いま目の前にいるジョーが私にとっては一番大切。


この大切なひとを作っているのは彼の過去の色々な経験や様々な思い。
何があったにせよ、今の彼を造る素になっているのは間違いない。
だから何があってもきっと、私はそれらを含めてジョーの全てを好きでいられるし、実際、好きなのだから。

 

だから――

 

 

 

 

――マユミさんて、ジョーとどんな関係のひとなの?

 

初恋のひと?

 

今も好きなの?

 

好きだったの?

 

 

――そんなことは、どうでもいい。

訊きたくないし、訊かないわ。知らなくてもいいんだもの。

 

知りたくないの。

 

 

 

 

 

――キャサリン王女とはどうやって知り合ったの?

 

デートしたって本当?

 

好きだったの?

 

今も――好きなの?

 

 

どうでもいい。

そんなの、知らなくていい。知りたくない。

 

 

 

 

 

――ユリさんとはどれくらい一緒にいたの?

 

不良時代のジョーを知ってるってことは、かなり古い付き合いよね?

 

もしかして、ジョーの初めてのひとって・・・

 

 

知りたくない。

知らなくていい。

 

 

 

知 り た く な い の ! !