知りたくない、ジョーの過去。


ええそうよ、知りたくないの。

どんなに訊きたくたって、きっと――訊いたら心穏やかではいられない。
そんな気がするから。

だから訊かない。


でも、そんな私はただ自分が可愛いだけの、身勝手な女の子なのだろうか。


もしもジョーが話そうとしたら、・・・どうすればいいのだろう?

 

 

 

僕にとってフランソワーズは、いまこの時に存在している大事なひと。

過去も未来もなくていい。

流動し変化してしまう不確かな記憶や可変的な未来なんてものも要らない。

 

僕にはいまのフランソワーズだけいればいい。

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジョー?」
「うん?」
「ジョーは私の他に何人と付き合っているの?」
「え!?」


青天の霹靂とはこのことだろう。


「――いないよ。フランソワーズだけだよ」
「ほんと?」
「うん」
「いつから?」
「ずっと前から」
「いつまで?」
「いつまででも」


フランソワーズはちょっと黙って、そして――ジョーの胸にゆっくりともたれた。


「そう――嬉しい」

 

 

 

本当に知りたいことはこれだけだった。


あとは何もいらない。