「ねぇ、ジョー?」 ただいまとお帰りとたくさんのキスを交わしたその後。 「レースの時はちゃんとしているのに、どうして普段は外してるの?」 彼の左手を両手で包み、そうっと撫でる。 「ユ・ビ・ワ」 ふっと笑うと、そのままフランソワーズの鼻の頭にキスをする。 「やっ・・・もうっ、ジョーったら」 真っ赤になって鼻を押さえて身を引くフランソワーズを優しく見つめ、ゆっくりと抱き締めた。 「――それはね」 指輪をしていると一緒に居るような気持ちになって、落ち着くんだよ―― 耳元で言われ、フランソワーズはくすぐったそうに身をよじった。 「だって、――だったらどうして今は外しているの?」 一瞬、見交わす目と目。 「――もうっ。・・・ジョーのばか」 指輪よりも写真よりも何よりも。 「やっぱり、本物には勝てないよ」 何よりも実物のフランソワーズが一番だった。 「――ただいま」 そうっと唇を重ねる。 「おかえりなさい――」
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「――駄目だよ。ほらっ。――決めただろう?さっき」 あっち向いてホイなんて、やったことなかったもの。 「ホラ、流すから目つむって」 頭からざばっと容赦なくかけられるお湯に目をつむる。 「駄目だってば。今日、髪を洗うのは僕」 ちゅっと額にキスされる。 「もうっ・・・ずるいわ」 だから、勝負の手段があっち向いてホイだなんて思わなかったもの。 そう言う代わりにため息をひとつ。 「これからずうっとあっち向いてホイで決めるの?」 その新ルールだって勝手に作ったくせに。・・・しかも、私が眠っている時に。 「何か言った?」 もういいわ。 「ホラ。目をつむって」 と、目をつむったら。 お湯で流される代わりに唇を奪われた。 「!――も、ジョーっ・・・」
この数分後にピュンマと鉢合わせすることになるのは、この時の二人はまだ知らない。
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「ジョー?洗濯物、ここに置くわね」 突然ドアが開けられた。可愛い声と共に。 「あ?うん――ありがとう」 今まさに着替えている所だったジョー。が、全く動揺せず笑顔を見せる。 「――お尻」 言って、険しい顔で部屋に入りあっという間にジョーのそばにやって来たフランソワーズ。 「ほら。ここ」 ぷに、と指先でつついてみる。 「痛くないよ?」 そうしてフランソワーズを見つめてにやっと笑う。 「――もしかしたら、それって昨夜の」 ジョーの下着から手を離し、訝しそうに彼を見つめる。 「昨夜何かあったの?」 途端に真っ赤に染まる頬。 「そんなトコロにちゅーしたりしないわっ!!」 そうだったかなぁ・・・と呟くジョーの声をよそに、頬を染めたままフランソワーズは部屋を出て行ってしまった。
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