「手取り足取り」 A
―3―
雨の日に出かける?
ジョーが?
マァ、珍しい。
熱でもあるんじゃない?
そう言ったら唇を尖らせていたけれど。 きっと五分も経たずに挫けて戻ってくるわ。
そう思って送り出したのだけど、ジョーは戻って来なかった。ちゃんと出かけて行ったのだ。 気になって視ていたからわかる。 雨脚が強くなって、ちょっとよろめきながら坂道を下って行った。
……ふうん。
どういう風の吹き回しかしら。
雨をとことん嫌っていたジョーなのに。 わざわざ出かけるなんて。 しかも車ではなく電車を乗り継いで行くという。
そんなに一生懸命になるような用事っていったい何なのだろう?
……ちょっと妬けるかも。
いいなぁ。 雨嫌いのジョーをしてわざわざ外出させるような強烈な動機。
いったいそれはどんな何?
明日には繰り越せないような用事。
きっととても大事なのに違いない。 そういうのってジョーに限って言えば車関係しか思い浮かばないのだけど、最近のジョーはそれとは無縁。
ああ、もやもやしてしまう。
ジョーのばか。
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