@<バスルームで鉢合わせ>

 

「――あ」

顔を見合わせてお互いに固まった。

 

「悪い悪い、ちょっと急ぐんだ。だから――いいかな」

脱衣所で、ピュンマが服を脱ぎ始める。
対するジョーは、バスルームのドアを大きく開けていたのを慌てて細めにした。
ギルモア邸のバスルーム。
約束事としては、入浴時には外に「入浴中」の札を下げておくことになっている。
が、9割が男性なので、男同士の場合は札がかかっていてもどんどん入ってくるのが常だった。
もちろん、それがフランソワーズの場合は困ったことになるので、彼女の場合だけは札が違っていて
「注意!入るな」という文字入りなのだった。

「ん?どうしたジョー?なんでそんなとこで」
「え、あ、イヤ・・・」
「ほら。入れないだろ?もう上がるんなら、先に出ろ」
「いやー・・・それがちょっと」

ピュンマの再三の声にも、バスルームのドアに両手をかけたままモジモジと動かない。

「ホラ。邪魔だ」

ピュンマがドアに手をかけると、物凄い力で押さえられた。一瞬、ドアがみしっと軋む。

「ジョー。いい加減に」

しろ、と言い掛けたところへ。

 

「ジョー、・・・もうだめ。のぼせちゃうわ」

 

弱々しい声が聞こえてきた。

 

「・・・・あ?」

 

ピュンマが目を丸くしてジョーをまじまじと見つめる。

その凝視から避けるように、ジョーは背後を振り返った。

「ゴメンゴメン。ちょっと待って」
「だって。まだ出たらダメ、って・・・いったいどうし」
「わー!!こっちに来るな!!」

 

ジョーの背後から顔を覗かせたのは――

 

「・・・お前らな。・・・ちゃんと札を――ああ、出してたのか」

一瞬、こめかみを押さえて目を閉じるピュンマ。

「――オーケー。特別に作ってやるから、次からそれ出しておけ」

 

 

***

 

「らぶらぶ混浴中・入るな危険!」(byピュンマ)