「おい、ジョー。ついてるぜ」
ジョーとフランソワーズはみんなと合流し、今はドルフィン号がこちらへ着くのを待っているところだった。
ジェットがジョーをちらりと見てにやにやしながら言う。
「え?」
「そこ。口元」
「えっ、あ!」
慌てて袖で口元を拭うジョーにジェットは呆れたように笑った。
「あのな。口紅つけて戻って来るんじゃねーよ」
「う、うん」
「てゆーか、あっさり認めるな」
真っ赤に染まるジョーに更になにかからかいの言葉をかけようとしたジェットであったが、そのジョーの背後から腕組みをしたフランソワーズが現れたので黙った。
「――口紅じゃないわ、残念ながら」
「えっ?でも赤い――」
「私は赤い口紅なんて持ってません」
「なんだって?じゃあ、お前――ジョー、おい、いったいどういうことだ」
ジョーの胸倉に掴みかかんばかりのジェット。
「どういうことって――」
逆にジョーは意味がわからず、困ったようにフランソワーズを見るばかり。
フランソワーズは息をつくとさらりと言った。
「それは敵の血だから」
「えっ!?」
「えっ?」
ジェットは驚いてジョーを見、ジョーはフランソワーズを見た。
「お前、敵を食ったのか……?」
おびえた目をするジェットに構うヨユウはジョーにはない。
――だってそんなはずは……フランソワーズは敵を噛んだあと、僕と……
それに血の味なんてしなかったし。
おろおろと戸惑うジョーにフランソワーズは片目をつむってみせた。
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