I僕の部屋君の部屋、自分たちの家
ドアを開けると真っ暗だった。 部屋の主はベッドの上にいた。上半身を起こし、射るような瞳でまっすぐにこちらを見つめている。 「・・・ひとりにしてくれないか」 その声は普段の彼のものとは程遠い、地を這うような低温だった。 「いったいどうしたの」 ドア口で気圧されたように立ちすくむ。ただならぬ気配に眉をひそめて。 「――どうもしない。俺のことはいいから」 思わず数歩前進する。スリッパに包まれた爪先が闇に呑まれる。 「ジョー!」 「いい。何でもない。放っておいてくれ」 肩を揺すると、ジョーはフランソワーズを睨むように見据えた。 「・・・わかったわ」 辛そうに、絞り出すように返事をして、フランソワーズは伸ばした手を引いた。 ジョーは手負いの獣のようだった。 彼がひとりにしてくれというなら、そうするほうがいいのだろう。 フランソワーズはそう思い、肩越しにジョーを振り返りながらも部屋を背にした。 「・・・じゃあ、行くわ」
|