注:映画「009RE:CYBORG」のSSです。
映画公開前につき、作中の人物の性格・口調等々は全て創作であり想像です。
PVの映像がネタ元ですが全ては妄想捏造です。

大丈夫な方のみ御覧ください。

 

「お姫様だっこ」
お題もの「触れあい」より

 

 

――飛び降りるなんて無謀すぎる。


――アラ、受け止めてくれないの?


直接の会話ではなかったから、お互いの顔は見えない。
声の調子で想像するしかなかった。


――受け止める受け止めないの問題じゃないよ。僕はただ、ヘリから飛び降りる必要があるのかどうか、って……

――受け止める自信がないのね?

――そうじゃないよ。ただ僕はその必要性ときみの体が心配なんだ。きみは僕のように丈夫に造られてはいない。
普通の女の子なんだから。

――普通の女の子だってスカイダイビングはするわ。

――きみがしようとしているのはスカイダイビングじゃないだろ。


フランソワーズは黙った。
そして可愛らしく小さくウフフと笑った。


――フランソワーズ、聞いてる?

――ジョー、残念ながら時間切れよ。


そう。
今や遠くに聞こえていたヘリの音は頭上まで迫ってきていた。


――くそっ。


ジョーは屋上へ駆け上がり続くドアを開けた。
雨が降っていた。足場は悪くつるつる滑るようだった。
そこへ一台のヘリが近付いてきていた――が、ジョーの立っている場所よりはだいぶ離れていた。


――いったいどこへ降りるつもりだ?


ジョーの問いに答えるように、ヘリから人影が舞い降りた。

どんどん落ちてくる。
ジョーのいる地点からは遠い。

間に合わない。――加速装置。

ジョーは心のなかで何度目かの悪態をつくと奥歯の横のスイッチを押した。

 

 

 

 

ぎりぎりだった。

かろうじて――滑り込みセーフ。


「本当に無茶だよ、フランソワーズ」

ジョーが息をつく。
その首筋に腕を回し、フランソワーズはにっこり笑った。

「だって信じてたもの」
「……間に合わなかったらどうなってたかわかってるよね?」
「ジョーが受け止めてくれることしか考えてなかったわ」

ジョーは文字通り滑り込んでいた。フランソワーズが着地する寸前に。
彼の腕はフランソワーズの膝の後ろと背中に回されていた。が、半分はコンクリートに擦れてずたぼろだった。
加速したまま滑り込んだのだから、摩擦熱で溶けるのは当たり前だろう。
しかしそんなことはおくびにも出さず、ジョーはくすりと笑った。

「――じゃあ、こういう格好で飛び降りたのは僕へのご褒美?」
「こういう格好?」

確かにフランソワーズの格好はスカイダイビングには見事に適さない格好であった。
これでもかというミニスカートに網タイツ。そしてそれがサービスするかのように少し捲くれ上がっていた。

「――ばか」

フランソワーズはジョーの顎に手をあてて自分のほうを向かせると、その唇に自分の唇を重ねていた。


――ご褒美はこっちよ。