「ところで、ジョー?これはいったいどういうこと?」


頬が緩んだナインのそばからいつの間にか消えていたスリー。
奥のほうから声がして、ナインは瞬時に飛び出した。

「フランソワーズ!その部屋はっ」

スリーは瓦礫の山を前に呆然としていた。

「・・・何か探してたの?」
「え?うん、まあ、そんなとこかな」
「見つかった?」
「え。・・・いや」
「じゃあ、私も一緒に探すわ」
「ええっ!?」
「探し物は得意なのよ。――この目が大活躍するんだから」
「あ、ああ、そうだろう・・・けど」
「で、何を探してたの?」
「え?」

言えない。

問うようにじっと見つめられ、ナインの全身の毛穴から汗がふきだした。

失くしたとかどこにしまったのか忘れたとか、いつもならすぐに彼女の助力を請うところである。だからスリーも無邪気に尋ねているのだけれど、ナインとしては絶対に言うわけにはいかなかった。
「きみの誕生日プレゼントがどこかにいってしまってね」などとは。
おそらく、言ったら彼女は少し驚いて、でも優しく一緒に探そうと言ってくれるだろう。けれども、ナインはそれだけは言いたくなかった。プライドが許さない。大事な彼女へのプレゼントがどこにあるのか忘れたなんて、とてもじゃないけど言えやしない。

「――そう・・・」

スリーはちょっと考えるように黙り込んだ。
そしておもむろに口を開いた。

「でも、今日は私のお誕生日だもの。一日、私の好きなように過ごしていいって言ってくれたわよね?」
「――うん」

だからナインの部屋に遊びに来ているのである。ナインの部屋でナインにご馳走したいの、いいでしょう?とおねだりされて、ナインに否と言えるわけがなかった。

「だから探し物のお手伝いをします」
「ええっ、それは・・・たいしたものじゃないし、後でいいんだ」
「でもこんな大捜索をするくらい大事なものなんでしょう?遠慮しなくてもお手伝いするわ」
「いや、でも」
「一人より二人の方が効率がいいし」
「いや、だから」

一歩も引かないスリーにナインが本格的に困り始めた時。スリーがナインの顔を見て笑い出した。

「・・・もうっ。ジョーったら」

ナインには何故笑われているのかわからない。

「え、なんだい急に。何がおかしい?」
「だって・・・ジョーの探し物って、もしかして」

そうして身を翻すとキッチンに戻ってしまった。ナインは話の展開上、後を追ってキッチンに続く。

「フランソワーズ。いったいきみは」

バッグをごそごそやっていたスリーは、「じゃーん」という効果音をつけてバッグから手を引き抜いた。

「ジョーの探し物ってこれじゃない?」