その手に握られていたのは、白いリボンのかけられた淡いブルーの小さな箱。


「えっ!?」


ナインは思わず飛びついていた。が、瞬時にそれをかわされる。

「いったいどこにっ、なんできみがっ」
「ギルモア邸のリビング。ソファのところに落ちてたわ」
「ソファっ・・・」

昨日、ギルモア邸にコーヒーを飲みに行ったのは、確かにこのプレゼントを購入した後のことだった。
そのままの足で行ったのである。おそらく上着を脱いだ時に何かのはずみでポケットから落ちたのだろう。

「一日早いプレゼントなのかしら、って思ったけど」
「返せよ」

ナインが手を伸ばすけれども、スリーはうまくすり抜ける。

「でも・・・もしかしたら、私へのプレゼントなんかじゃなくて、誰か他のひとへの大事な贈り物かもしれないでしょう?――今も取り返そうって必死だし」

スリーは笑いを引っ込めて、至極真面目な顔でナインを見た。
両手のひらに箱を載せて、ナインに差し出す。

「・・・駄目でしょう?落としたりして。時期が時期だけに誤解しちゃうわよ?」

誤解しちゃうわよ、という声が少し震えているような、スリーの瞳が潤んでいたような、そんな気がしてナインは咄嗟にスリーを抱き締めていた。

「・・・ジョー?」
「――頼むよ、フランソワーズ。どうしてそんなに僕に意地悪するんだい?誤解してていいに決まってるじゃないか。他のひとへの贈り物だなんて言っていじめないでくれ」

そもそもポケットから落としたことにも気付かなかったナインに非があるのではないかと思いながら、けれどもスリーはそこを指摘するのはやめておいた。
何しろ、今、とっても嬉しいプレゼントを貰ったことに気がついたのだ。

「・・・私、ジョーをいじめてた?」
「いじめてたよ。酷いよ」
「そう・・・可哀相なジョー」
「ほんとだよ」

そうして甘えるように頬をすりよせるナイン。その頭を撫でながら、スリーは微笑んでいた。

――私、ジョーをいじめて勝ったのって初めてかもしれない。


何故、ふだんナインが自分をからかうのか、わかったような気がした。

 

 

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