「一緒にいようね」

 

 

ナインのお誕生日。
去年は一日遅れてお祝いした。
だってその日、ナインは――「彼女と」過ごすって自ら公言していたのだから。
だから私は、みんなでお誕生会を開こうと思っていたけれど放棄した。
その日はずっと部屋にこもって、ナインの恋人ってどんなひとなんだろう――と悶々と過ごしていた。
でも、結局その日の午後にナインはやって来て、急遽お誕生会をすることになった。
私はプレゼントも何も用意していなかった。
だから翌日に改めて、ナインの好きなものとお花を準備して、ナインの家でお祝いした。

思えば、ふたりっきりでナインの家にいたのはあれが初めてだった。

 

今ならわかる。
ナインは、本当は私と過ごすつもりだった、ということ。
――最初から。

 

ナインの誘い方は難しくて、――たぶん、照れ隠しなんだろうと思うけれど――最近になるまでちっともわからなかった。
だって普通、「その日は彼女と過ごすんだ」って言われたら、その言葉通りに思うでしょう?
でもナインの言う「彼女」というのは、つまり私のことで。
だから、翻訳すれば「その日は私と過ごすつもりだよ」っていう意味で。
そんなの、絶対、わからないんだから。

そんなナインのせいで何度も悲しい思いをした。

でも、それって何だか悔しい。
私ばっかり、どきどきして。ナインは全然平気な顔で。

そもそもそんな自信たっぷりの誘い方をするなんて、私が絶対断らないと思っているってことでしょう。
私がナインを凄く好きなの、全部ちゃーんとわかっていて。

そんなのって、何だか悔しい。

ナインだってどきどきして欲しい。たまには。

 

だから。

 

本当に軽い気持ちだった。
すぐに、嘘よ、って笑って言うつもりだったのに。