・・・あなたは?ジョー。

 

 

 

 

俗にいう「質問返し」だった。

 

 

 

 

 

 

僕の初恋のひとは誰か、だって?

そんなもの。

・・・そんなの、できれば「金髪碧眼の女の子さ」と言いたい。
でも、やっぱりそうじゃないから言えない。

 

・・・でも。

 

別に馬鹿正直に言う必要なんか、ないんだよな?
きっとスリーだって、そういう返事は期待してないさ。

おそらく、彼女が期待しているのは、

 

僕の初恋のひとはきみさ。

 

という言葉だろうから。

 

・・・・・・。

 

心のなかで言っただけなのに、あまりにも恥ずかしいセリフに身体が痒くなった。
しかも、なんだか凄く嘘くさい。
鋭いスリーのことだ、すぐ嘘だと見抜くだろう。
そうしてきっと、嘘をつかれたのを気にして落ち込むか怒るかどちらかで・・・

いずれにせよ、しばらく口をきいてくれないだろう。

そんなことはゴメンだ。

だったら、やっぱり正直に言うべきなのだろうか。

ちらりとスリーを見ると、彼女はじっとこちらを見ていた。

うわわっ。
そんな、いかにも答えを待ってます的な顔をされてもっ・・・

きらきらした蒼い瞳。
じっと僕を見ている。少し首を傾げて。

僕の初恋のひとは黒髪に黒い瞳の日本人で間違いないだろう。
周りに外国人なんていなかったし。近所のお姉ちゃんだったか、小学校の同じクラスの女の子だったか。
そのあたりだったろうと思う。
僕は記憶を辿り、なんとか顔を思いだそうとした。
が、いっこうに浮かんでこない。なんと全員、のっぺらぼうなのだ。

初恋のひとの、顔も覚えていない・・・なんてことは、おそらくよくあることだろう。

だけど僕は、初恋のひとだけではなく、中学生の頃の彼女とか、それ以降の彼女たちの顔も忘れてしまっているようだった。

――記憶喪失か。

どうして記憶喪失になったのかわからないが、これはいいかもしれない。
スリーに、そんなの忘れたと言えばいいのだから。
しかもこれは嘘ではなく本当の話だ。

僕は大きく深呼吸した。

――ヨシ。

言うぞ。

 

 

 

「そんなの、フランソワーズに会ってから忘れたよ」

 

 

 

 

 

・・・あれ?

 

予定していたセリフと違う。

口が勝手に何か喋った。

 

スリーは頬を薔薇色に染めて「いやだわ」と言ってうつむいた。

 

 

 

 

 

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