ひとくち大のハートのチョコレート。 「うん。うまい」 心配そうにナインの顔を見つめていたスリーは、彼の言葉にほっとしたように微笑んだ。 「・・・良かった」 その笑顔を見つめ、こちらも同じく笑顔になったナイン。 「きみも食べたら?ひとつくらいならあげるよ」 でも、あとはダメだぞ。全部、僕のなんだからな――と、大威張りで言う。 「ううん。作っている時にいくつも味見したから、しばらくチョコはいいわ」 しばらくナインがチョコレートをかじる音だけが響く。 「・・・あのね、ジョー」 ナインの隣で、スリーが自分の手元を見ながら小さく言った。 「ひとつ、聞いてもいい?」 ちらり、とナインを横目で見るものの、再び視線は下へ。 「・・・今日ってバレンタインデーだったでしょう?」 ナインの手が止まる。 「・・・ふうん」 にやりと笑う。が、質問には答えず、再びチョコレートをつまむ。 「ね。ジョー」 ぱっと頬が朱に染まる。 「・・・ジョーの意地悪」 それもそうだな、と呟いてナインはソファにもたれると指折り数えはじめた。 「ええと、・・・1個2個3個・・・・6個、うーん、・・・プラス4個の、・・・」 そう言ってスリー手作りのチョコをつまむ。 「ん。でも、食べすぎよ。鼻血ぶーになっちゃうわ」 ナインの手から取り上げてしまう。 「ちゃんと歯磨きもするのよ?」 スリーの頬を両手で包むようにして、至近距離からじっと見つめて。 「――逆チョコって知ってる?」 真剣な表情のナインに、これは何か難しい話なのかもしれないとさっと緊張する。 「・・・男から渡すチョコレートのことさ」 そうして重ねられた唇。 ナインからは甘いチョコレートの香りがした。
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「・・・もうっ」 しばらくして離れたあと。 「ジョーったら、ちゅーしてばっかり!」 真面目な顔で訊くナインに、ますます頬が熱くなる。 「・・・だ。だめじゃない、ケド・・・」 くすりと笑みを洩らし、優しくスリーの前髪を撫でるナイン。 「・・・ジョーの意地悪」 いたずらっぽく煌く黒曜石。 「・・・知ってたわ、もうずうっと前から」 ため息とともに言うと、ナインに頬をつつかれた。 「でも、好きな子にしか意地悪しないけどね」 しつこく頬に触れるナインの手を除けながら、好きな子をいじめるって発想はやっぱりコドモなのじゃないかしら・・・とスリーは思う。 でも、そんなコドモなひとを好きな私も、やっぱりコドモなのかしらね?
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