「フランソワーズ!」
間に合わなかった。
目の前で僕の――僕のフランソワーズが倒れるのをただ見ていることしかできなかった。
目の前にいるのに、僕には何もできない。
「フランソワーズ、フランソワーズっ!!」
必死に名を叫んでもびくとも動かない。
うつぶせに地に伏したその体からは目に鮮やかな血液が流れていて――拍動していたから、動脈からの出血だ――このまま放っておいたら、
ものの数分でフランソワーズは。
「フランソワーズっ!!」
声を限りに叫んでも聞こえない。
届かない。
「フランソワーズっ」
血液は地面を這うようにどんどんひろがってゆく。
防護服が染まる。
乱れた髪が血液で濡れる。
力なく放り出されている彼女の白い手も。
「フランソワーズっ!!」
僕は。
何もできなかった。