「アヒルの顛末」

 

 

その日、ナインの部屋にやって来たスリーは真っ先にバスルームへ向かった。
深い意味はない。
それは、彼女言うところの「確認」のため、なのだから。

ナインはスリーのあとから部屋に入ると、彼女に構わずリビングに行った。
そうしてソファに座り、手元の雑誌を引き寄せる。眉間に皺を寄せて。

 

 

***

 

しばらくして軽い足音が響き、スリーが姿を見せた。


「ジョー!」


頬が紅潮している。


「ねぇ、どうして2つになってるの!?」


ナインは無言である。


「もうひとつ、買ってくれたの?」


ナインの頬が少しずつ赤みをましてゆく。
目は雑誌に向けたままだ。


「ねえ、ジョー?」


スリーが行ったバスルームには、確かに彼女のアヒルがいた。一週間前と変わらずに。
が、その隣にはサイズ違いの同じく黄色のアヒルがいたのだった。
寄り添うようにぴったり並んで。


「ジョーってば」


ナインは答えない。


「あれって・・・なんだか私たちみたいよね?」


頬を染めたままスリーが言う。

――置いていったって、こんなもん捨てちまうぞ
と言っていたナインなのに。

ナインは頬を赤くしたまま、ひたすら雑誌を読み続けた。

スリーに逆さまよと言われるまで。

 

 

 


旧ゼロトップへ