「地震」

 

 

「今朝の地震、怖かったわよねえ」


朝、ナインがコーヒーを飲みにギルモア邸に行くと、スリーがそう言って身を震わせた。


「・・・怖かった?」
「ええ。すっごく揺れたもの!ジョーは怖くなかったの?」


ナインは地震に慣れている日本人であるから、少しの揺れはどうってことなかったし、更に言うなら、怖いなんて思うわけもなかった。


「別に」
「別に、って・・・ジョー」
「地震をいちいち怖がっていたら、日本になんか住めないぞ」
「そんなこと言ったって、怖かったんだもの」
「ギルモア邸は耐震だから大丈夫だよ」
「・・・ジョーの所は?」
「えっ。うーん。古いマンションだからなぁ。どうだろう。耐震とか免震とか無いんじゃないかな」
「ほら!」

スリーが両手を拳にしてぎゅうっと握りしめた。

「だから怖いのよ!」
「・・・え?」
「ジョーのマンションが崩れたら、って」
「震度3なら大丈夫だよ」
「でも!さっきジョーがくるまで心配だったし、怖かったんだから」
「僕は009だから、潰れたりしないと思うけど」
「もう!そういう問題じゃないの!」


頬を紅潮させたまま、怒ってキッチンに行ってしまったスリー。
その後ろ姿を見送りながら、ナインは心の中で息をついた。


・・・まったく。
君がひとりでパニックになっているんじゃないかと心配して死にそうだったのはこっちの方だよ。

・・・隣に寝ていたら、ずっと守ってあげられるのに。