「一緒にいこうね・後日談」

 

 

「ねえ、ジョー、一緒にいきましょうよ」
「えっ」
「ほら、早くぅ」
「えっ、いや、でも」


腕をとられて、つられて立ち上がって。
そのままどこぞに連行されそうになって、ナインは慌てて足を踏ん張った。


「だ、ダメだよ、まだ」

昼間だし。

ここはギルモア邸だし。

セブンもいるし。

しかし、そのセブンはにやにやしながら言う。

「アニキ、諦めていっちゃえば?」
「ほら、セブンも言ってるじゃない」
「いや、でも」

おかしい。
これは何かの陰謀に違いない。
ふたりがそんなことを平気で言うなんて。

ナインの額に汗が滲む。

いったいどうすればいいのだろうか。

正義の戦士としては、セブンのような子供の前では適切な態度を取りたい。


「だ。だめだ、フランソワーズ」
「どうして?すぐじゃない」
「すぐ、って、きみっ・・・」

ナインの顔が赤黒く染まってゆく。

「だって、ジョーと一緒ならすぐいけるじゃない」
「い、一緒ならすぐ、って」

ナインの喉が詰まる。
思わずごくりと唾を飲んだ。

「ね、いいでしょう?」
「い、いやでも、しかしだな」
「一緒にいきたいの」
「むう」
「ジョーは一緒にいきたくないの?」
「い、いや、いきたいさ」
「だったらいいでしょう?早くいきたいの」
「ふ・・・」

フランソワーズ。
きみはもしかして、そういう関係に新たな一歩を踏み出そうと、そういうわけなのかい?

ナインが、ならばと決心を固め、改めてスリーを見るとスリーは甘えたような声で、しかしきっぱりと言ったのだった。


「ね?ジョーが車を出してくれないと困るのよ!」

「えっ・・・」


車?


「そうよ。アイスクリーム屋さん、もうすぐ閉まっちゃうんだもの、急がなくちゃ!」

「あ・・・」


アイスクリーム。


ナインは力なくぐったりと座り込んだ。

「ジョー?どうしたの・・・まあ大変!凄い汗」
「いや、いい。気にするな」
「でも、顔色もよくないわ」
「いや、大丈夫だから」
「でも」
「・・・一緒にいくんだろ?」
「ええ。そうだけど・・・」
「行ってやるさ!」

どこまでも。

ナインは立ち上がるとスリーの手を引っ張った。
そのまま率先して玄関に向かう。

「もうっ・・・さっきまで渋ってたのに、変なジョー」

少し考えて。

「あ!ジョーもあそこのアイスが食べたいのね!」

私はストロベリーが好き、ジョーは?と楽しげに言うスリーに、ナインは

「・・・バニラ」

と力なく答えた。