「一緒にいこうね・後日談」
「ねえ、ジョー、一緒にいきましょうよ」 昼間だし。 ここはギルモア邸だし。 セブンもいるし。 しかし、そのセブンはにやにやしながら言う。 「アニキ、諦めていっちゃえば?」 おかしい。 ナインの額に汗が滲む。 いったいどうすればいいのだろうか。 正義の戦士としては、セブンのような子供の前では適切な態度を取りたい。 ナインの顔が赤黒く染まってゆく。 「だって、ジョーと一緒ならすぐいけるじゃない」 ナインの喉が詰まる。 「ね、いいでしょう?」 フランソワーズ。 ナインが、ならばと決心を固め、改めてスリーを見るとスリーは甘えたような声で、しかしきっぱりと言ったのだった。 「えっ・・・」 「あ・・・」 「ジョー?どうしたの・・・まあ大変!凄い汗」 どこまでも。 ナインは立ち上がるとスリーの手を引っ張った。 「もうっ・・・さっきまで渋ってたのに、変なジョー」 少し考えて。 「あ!ジョーもあそこのアイスが食べたいのね!」 私はストロベリーが好き、ジョーは?と楽しげに言うスリーに、ナインは 「・・・バニラ」 と力なく答えた。
「えっ」
「ほら、早くぅ」
「えっ、いや、でも」
腕をとられて、つられて立ち上がって。
そのままどこぞに連行されそうになって、ナインは慌てて足を踏ん張った。
「だ、ダメだよ、まだ」
「ほら、セブンも言ってるじゃない」
「いや、でも」
これは何かの陰謀に違いない。
ふたりがそんなことを平気で言うなんて。
「だ。だめだ、フランソワーズ」
「どうして?すぐじゃない」
「すぐ、って、きみっ・・・」
「い、一緒ならすぐ、って」
思わずごくりと唾を飲んだ。
「い、いやでも、しかしだな」
「一緒にいきたいの」
「むう」
「ジョーは一緒にいきたくないの?」
「い、いや、いきたいさ」
「だったらいいでしょう?早くいきたいの」
「ふ・・・」
きみはもしかして、そういう関係に新たな一歩を踏み出そうと、そういうわけなのかい?
「ね?ジョーが車を出してくれないと困るのよ!」
車?
「そうよ。アイスクリーム屋さん、もうすぐ閉まっちゃうんだもの、急がなくちゃ!」
アイスクリーム。
ナインは力なくぐったりと座り込んだ。
「いや、いい。気にするな」
「でも、顔色もよくないわ」
「いや、大丈夫だから」
「でも」
「・・・一緒にいくんだろ?」
「ええ。そうだけど・・・」
「行ってやるさ!」
そのまま率先して玄関に向かう。