合コンは男女三人ずつだった。
いずれも好青年で、誰もナインのように私をコドモ扱いしたりなんかしなかった。

普通の男の人って、そうよね?
私をコドモ扱いしてばかりいるナインがちょっと変わってるんだわ。

ひとりの女性として扱ってもらえるのは嬉しくて――私は、いつもよりワインがすすんだ。
お食事も美味しかったし、いつもの仲間との会話も弾んで、とても楽しかった。

ナインったら、いつもこういう楽しい思いをしていたのかしら?
合コンの話を聞く度に、今度は私も連れて行ってと言うと途端に不機嫌になるナイン。
きみはまだコドモなんだから、行ったって楽しくないよと決め付けるナイン。
こんな楽しい思いをしていたなんて、自分ばっかりずるいわ。
明日、ナインに会ったら、言わなくちゃ。楽しかったのよ、って。私はナインが言うようなコドモじゃないのよ、って。

楽しい会話と美味しい食事と雰囲気に――私はすっかり酔ってしまった。

 

***

 

帰りは思ったより遅くなった。
楽しくて、話が弾んで、気付いたら終電を逃してしまっていた。
困っている私たちに、男のひとたちがそれぞれ送ってくれると言ってくれた。みんな車で来てるから、って。
そういえば、彼らはアルコールを口にしていなかったように思う。
こうなる事を心配して、きっとお酒を飲まないでいてくれたに違いない。――紳士なんだわ。

彼らの申し出通りに、分かれて車に乗り込んだ。それぞれ家まで送ってくれるという。
だから私は何も考えずに車に乗り――いつまでたっても家に着かないのに気付いたのは、しばらくしてからだった。

「あの・・・、うちはこっちの方じゃないわ」

話が弾んで、ずうっと笑いっぱなしだったから気付くのが遅れた。
私、道を間違って言ってしまったに違いない。

「ごめんなさい。私の言い方が悪かったのね」
「――ああ、違うよ。そうじゃなくて、その・・・少しドライブしないかい?」
「ドライブ?」

真夜中なのに?

「――だめかな?フランソワーズと一緒に居ると楽しくてさ。もう少し付き合ってくれないかな」

私と一緒に居ると楽しい。・・・本当に?
男のひとにそんな風に言われた事は無かったから、単純に嬉しかった。

「もちろん、ちゃんと家まで送るからさ」

・・・そうね。
私も、もう少し話してみたい。そう思った。
同じ年頃の男のひとというとナインしか知らなかったから、他のひとはどんな話をするのか知りたかった。
私をコドモ扱いなんてしないひと。
話していて楽しいけれど、ほんのちょっと緊張感もあって。
それはナインには感じない緊張感だった。

もしかしたら、ナインと私は――やっぱり、家族の延長なのかもしれない。
兄と妹。
いつも私をコドモ扱いするナイン。
あやすように頭を撫でるナイン。
彼にとって私は女の子ではなくて――手のかかる妹なのだ。

だから彼には、たくさんのデートの相手がいて――みんな素敵なオトナの女性だった――その話を平気で私にしたりするのだ。
妹に話すみたいに。
平気で。
私がどんな気持ちで聞いているのかなんて、全然わかってない。

でも私は、近くにいたのがナインだけだったから――だから、彼のことを好きになっただけなのかもしれない。
――兄さんみたいで、頼りになったから?
わからない。
でも。
おそらく私には、サイボーグ戦士以外の、普通の友人が必要なのかもしれなかった。
特に、異性の。
ナインやセブンや――誰とも違う異性の友人が。

そう思うと、これはせっかくの機会なのだから楽しまなくてはと思った。
隣にいるこのひとは、悪いひとではなさそうだし。
話していて楽しいし。
彼に対して感じている緊張感も、なんだかくすぐったくて苦痛ではなかった。

もしかしたら、これが恋に育つのかもしれない。

 

「ええ。いいわ」