「――帰るぞ」 ポツリと言って背を向ける。
「・・・酒くさいな」 しばらく歩いてから言われる。その声は、感心しないな、と続けた。 「全く。僕が来なかったらどうなっていたと思うんだ」 いつもの怒っている声ではなかった。 「大体、きみは無防備すぎる。あんなの、何されてもいいって言ってるようなもんだ」 ジョーは怒らない。 ――呆れられている。 無理もない。 そんな私の行動で――さっきの彼を傷つけてしまった。 いま目の前を歩いているジョーにも――きっと、心配をかけた。
ジョーは怒らない。
いつもみたいに怒鳴らない。
ただ、静かに言うだけで――それは、私など怒る価値もないと思っているからで、呆れているからに違いなかった。 「・・・ごめんなさい」 視界が滲んだ。 足が止まる。 胸が――痛い。
ひとりでずんずん歩いて行ってしまうジョーと随分と距離が開いた。 鼻の奥がつんとして――地面にぽたぽたと涙が落ちた。
ジョーは気付かない。 振り返らない。
行ってしまう。
私を置いて。
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