「イケメンの条件」

イケメンの条件。
「さわやか」「誠実」あとひとつは?

 

 

「――なんだって?」

「だから、イケメンの条件。『さわやか』『誠実』あとひとつはなに?」
「そんなの決まってる。『正義』さ。これしかない」
「正義?」
「正義のヒーローには不可欠だろう」
「…私が訊いたのはイケメンの条件なんですけど」

スリーがそう言うとナインはふんと鼻で笑った。

「そもそもが愚問なんだよ。大体。誰に向かってその質問をしているんだい?」
「誰って…ジョーよ?」
「そう、僕だ。僕に今さらそんなことを訊いてどうするつもりなんだい?」
「どう…って」
「これはイケメンじゃない人間がイケメンと呼ばれるために必要な条件なんだろう?」

そうだったかしら、とスリーはちょっと首をかしげた。

「みんなそれを満たすために努力してるってわけだ。もちろん、外見の話じゃない、内面の話だ。中身が既にいけてる人間にする質問じゃないくらいきみにもわかりそうなもんだけど?」
「…ジョーは自分がイケメンだと思っているのね」
「思っているんじゃなくて事実だからしょうがない」

きっぱり言う彼の顔はいたって真面目で、本当の本気でそう思っているのは確かなようだった。

ナインがイケメン。

確かに外見も内面も、誰が見てもそう思うだろう。彼の言っていることはもっともだった。

しかし。

「…でも、ほんとうにイケメンのひとは自分でそういうこと言わないと思う」
「それは自信がない奴のいいわけだ。僕は自分に自信がある。それだけの話さ」
「…それってなんだか嫌なひとじゃないかしら」
「何を言う。自分を正当に評価するのは大事なことだ」
「…そうだけど」
「そもそも、僕のことよりきみだ。きみは自分を過小評価しすぎる。もっと自信を持つべきだ」
「私?」
「ああ。きみは物凄く可愛いのに認めようとしない。もっと自負してくれ」
「――だって私、そんなに」

可愛くないもの。ジョーが勝手にそう思っているだけよ。と言おうとしたけれど顔が熱くなって何もいえなくなってしまった。

「正義のヒーローでイケメンの僕が言うんだから本当のことだ」
「で、でも」
「そしてそういうフランソワーズを守るのが僕の役目だ」
「…それって、正義のヒーローだから?」
「違うよ」

好きでしょうがないからに決まってるだろ、とナインはスリーにキスをした。

 

 

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