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「スリー・・・フランソワーズ!何をしてるんだ!」

いつものようにやって来たナインは、庭にいる私とセブンを見つけたと同時に大慌てで割って入った。
私は構わず、銃をセブンに向けた。

「セブン!何やってるんだ!」
「アニキ・・・」

チラチラとこちらを見つつも、泣きそうな顔でナインに訴えるセブン。

「ずうっと射撃練習に付き合わされてるんだ。しかも、オイラに自分を狙って撃てって言って」
「――撃ったのか!?」
「だって、わざと外したら怒るんだよ」

ナインは舌打ちをすると、私を睨みつけた。
私の姿はというと、防護服を着てはいるものの、あちこち傷だらけだった。

「フランソワーズ!やめるんだ!」
「いや!どいてよナイン!」
「フランソワーズ!」

ナインはやって来ると私の腕を掴んだ。

「やめるんだ!」
「いやよ。離して」
「ダメだ」

有無を言わせず、私の腕を捻り上げレイガンをもぎ取った。

「君は女の子なんだ。こんなこと、しなくていい!」
「嫌よ!私だって003なのよ!」
「関係ないよそんなこと」
「関係あるわ!私、もうあなたのお荷物にはなりたくない」
「お荷物?」
「だって、そうでしょう?いつも簡単に捕まってあなたに迷惑をかけてしまう。そんなの嫌なのよ!」
「お荷物だなんて言った事はない」
「でもわかるの!」

ナインは一瞬黙り、そして・・・掴んでいた私の腕から手を離してポツリと呟いた。

「君は何にもわかってないよ、フランソワーズ」

わかってるわよ。十分すぎるくらい。
私はあなたの足手まといになっているの。ただのお荷物になってるの。
だから、このままではいつかきっと、あなたを窮地に追い込んでしまう。――この前みたいに。
そんな自分は嫌なの。だから・・・
――どうしてわかってくれないの?

「・・・君は全然、わかってない」

もう一度繰り返すナイン。

「僕は君を足手まといだなんて思った事は一度もない」
「でも・・・」
「いいかい?君は生身の部分が多い。だから、僕と違って撃たれればダメージを受ける。君の身体は機械じゃないんだよ」

息が詰まった。瞬時に動悸がし――頭に血が昇った。

「私の身体だって、半分は機械よ!?知ってるでしょう!?」
「それは違う。君はそれでも――僕よりも、他のみんなよりも、誰よりも生身に近いんだ」
「だから差別するの?何にもさせてくれないの?」

必死の思いで頭を左右に振る。

「・・・そうじゃないよ、フランソワーズ」
頼むから泣かないで。とナインが続ける。

「フランソワーズ。君は戦わなくてもいいんだ。僕のように――戦う機械ではないのだから」

戦う機械。

あの時敵が言い放った言葉の矢は、間違いなくナインをも貫いていた。

「――僕は半分以上が機械で、生身の部分なんて僅かしか残っていない。戦わなければ、ただの鉄クズに成り下がるだけだ。でも、君は違う。君は鉄クズなんかにならない・・・させない。」